村上龍自選小説集(8) の商品レビュー
「この小説集は逸脱と自己循環にあふれている」とは作者の言葉だが、簡単に言えば脇道にそれて戻ってこれなくなっているということだ。『コックサッカーブルース』は村上春樹の『羊をめぐる冒険』を基にして書かれたという。「期限内にあるものを見つけろ、失敗したら殺す」ということだ。ハードボイル...
「この小説集は逸脱と自己循環にあふれている」とは作者の言葉だが、簡単に言えば脇道にそれて戻ってこれなくなっているということだ。『コックサッカーブルース』は村上春樹の『羊をめぐる冒険』を基にして書かれたという。「期限内にあるものを見つけろ、失敗したら殺す」ということだ。ハードボイルドといえばそうだし疾走感にあふれていて読みやすく笑える箇所も多い。『フィジーの小人』は良くも悪くも村上龍という作家を象徴してしまっている問題作。ワヌーバという小人が性の快楽に溺れていく様子と祖父の手記が交錯していき絶望のラストへと駆け抜ける。『超伝導ナイトクラブ』ははたして作品としてどうなのかと思う部分もあるが、ナイトクラブから一歩も出ないで妄想変態精神病ちゃんぽんのB級感を味わえる点はとても良い。最先端の科学用語と下ネタをミックスしたラップを始めた時には驚いてしまった。この小説集は現在ではアマゾンでも品切れでマーケットプレイスで定価より高い価格でしか入手できなくなっているが、村上龍という作家を良くも悪くも凝縮しているので初めて村上龍の作品を読む人にはまずこれをおすすめしたい。ヒットすればその人は龍さんのフリークになるだろうし外れれば大嫌いになるだろうが。
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