天国と地獄 の商品レビュー
キリスト教の「最後の審判」をモティーフにした絵画について、図像学の観点から解説をおこなっている本です。 本書ではまず、キリスト教における終末観と、ヨーロッパの歴史のなかでその考えが人びとにどのように受けいれられてきたのかということが論じられます。とりわけ「ヨハネの黙示録」のイメ...
キリスト教の「最後の審判」をモティーフにした絵画について、図像学の観点から解説をおこなっている本です。 本書ではまず、キリスト教における終末観と、ヨーロッパの歴史のなかでその考えが人びとにどのように受けいれられてきたのかということが論じられます。とりわけ「ヨハネの黙示録」のイメージ豊かな叙述は、ヨーロッパの芸術家たちの創造の源でありつづけてきたことが解説されています。 その後、イタリアと北方ヨーロッパの二つの潮流に分けて、「最後の審判」を題材とした絵画についての考察がおこなわれます。前者では、ミケランジェロによって制作されたシスティナ礼拝堂の『最後の審判』がとりあげられ、中世の厳格なフォーマットから自由な表現が見られながらも、そのモティーフが壮大な構図のもとで展開されていることが示されます。 他方、北方ヨーロッパの絵画では、ヒエロニムス・ボスの『神の審判、すなわち楽園と地獄』の紹介を経て、『快楽の園』にかんする考察へと、著者は議論を進めます。祭壇画から世俗画への移行において、「最後の審判」というモティーフが中世的な図像学の理解では把握することのできないような意味をもつようになったことに目を向けつつ、多様な解釈に開かれているその作品の謎へと読者をいざなっています。
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