平成おとぎ話 の商品レビュー
河合さんが京都新聞で四年間に渡り月イチ連載したコラムをまとめた本。 コラムなだけに文章がコンパクトで作業の合間にちょこちょこ読んでました。 印象に残っていたのはアイヌの「父親殺し」の昔話。 昔話は高校の頃に興味があって読みたくっていたので。 病気が流行する村である母親が神に娘の...
河合さんが京都新聞で四年間に渡り月イチ連載したコラムをまとめた本。 コラムなだけに文章がコンパクトで作業の合間にちょこちょこ読んでました。 印象に残っていたのはアイヌの「父親殺し」の昔話。 昔話は高校の頃に興味があって読みたくっていたので。 病気が流行する村である母親が神に娘の養育を祈った。 そして神は養父として娘を育てることとなる。 けれど彼は「人食い」という低い地位にある神で、 成人した娘を喰いたくて喰いたくて堪らなくなってしまいます。 そのため娘は小屋に養父を閉じ込め、火をつけて焼き殺す。 こんな話。 これだけだと悲劇というが悲惨な話ですが、これには続きがあって 後日娘の夢に養父が現れ 「おまえの神聖な火で、人食いの罪を犯すのを免れたばかりか、高位の神になれた」 と彼女に感謝し、その後、彼女の守護例として娘を幸せにしたのです。 子どもというのは親を越えて成長するものだから、 象徴的な意味で「親殺し」というのは必要であり、 その「親殺し」によって親子のよい関係が気づけるってのにつなげていて脱帽。 あと、こんなこともコラムで書いてましてね、なんだか考えさせられたり。 『近代化というものは、効率化、数量化などを大切にし、明確な概念によって合理的、論理的に思考することを必要とする。しかし。これはともすると人間をギスギスさせたり、冷たい人間関係を生み出したりする。そんなときに、「おはなし」はそこから人間を救い出す効果をもっている。さりとて、おはなしばかりしていては、なんとも不能率になるし、全体との兼ね合いが難しいところであろう。』 うーん、って思います。理想と現実、論理と行動。 『綺麗は穢い、穢いは綺麗、さあ、ゆこう。よごれた空をかいくぐり。』 世の中表裏一体なんですよね。どちらがどうだというのでなくバランスが大切。 これが難しいんですけどね。
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心理学者、ユング研究家、夢分析の第一人者、最近では文化庁長官、いろんな顔を持つ著者ですが、優れたコラムニストとして、僕は尊敬しています。 ここに掲載されているコラムも、さまざまな示唆に富んだ話がたくさん載ってます。一番心に引っ掛かりがあったのは、「無力の自覚が大切」というタイト...
心理学者、ユング研究家、夢分析の第一人者、最近では文化庁長官、いろんな顔を持つ著者ですが、優れたコラムニストとして、僕は尊敬しています。 ここに掲載されているコラムも、さまざまな示唆に富んだ話がたくさん載ってます。一番心に引っ掛かりがあったのは、「無力の自覚が大切」というタイトルで、早産・難産のお母さん方に接していた臨床心理士の話です。 ホームランはなくても、確実に魂に伝わる話が満載です。
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