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2016/10/03

マレル1998年発表作。出だしこそ典型的なスリラーだが、プロットに大きな捻りを加えている。実質二部構成で、前半終了時に大きな山場を迎えたあと、本作の隠されたテーマ「ストーキング」の恐さが前面に出る。 数々の戦場写真により著名となったフォトジャーナリストのコルトレーンは、ボスニアの...

マレル1998年発表作。出だしこそ典型的なスリラーだが、プロットに大きな捻りを加えている。実質二部構成で、前半終了時に大きな山場を迎えたあと、本作の隠されたテーマ「ストーキング」の恐さが前面に出る。 数々の戦場写真により著名となったフォトジャーナリストのコルトレーンは、ボスニアの山中で大量虐殺の証拠を押さえる撮影に成功する。だが、隠滅工作を指揮していたセルビア人司令官イルコビッチに発見され、重傷を負いながらも現場から逃走。写真は大々的に報道されるが、行方をくらましていたイルコビッチに執拗に狙われることとなる。一方で、悲惨な写真を撮り続けることに心身を消耗したコルトレーンは、余命僅かな伝説の写真家パッカードと出会い、〝再生〟への道を模索する。パッカードの死後、その芸術を自家薬籠中の物とすべく、そのイメージを追い掛けていたコルトレーンは、遺品の中に美貌の女レベッカの写真を発見。容姿が瓜二つのナターシャとの遭遇により、秘められた過去の謎へと没入していく。 中盤でイルコビッチと対決するコルトレーンは付け狙われる側であったが、後半では逆転して知らずに自らが「ストーキング」を為す者へと変わっていく。 相反するイメージが二重写しとなり、そこから予想外の相貌が浮き上がっていくさまなど、マレルのストーリーテーリングは鮮やかだ。文章は簡潔にしてスピード感重視。アクションよりも心理的に追い詰められていくサスペンスをメインに描く。

Posted byブクログ