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国民の油断 の商品レビュー

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2018/10/22

本書の著者である西尾、藤岡両氏のほか、秦郁彦、小林よしのりらが中心メンバーを務める「新しい歴史教科書をつくる会」の運動は、大きなニュースになりました。本書は、これまでの歴史教科書を支配してきた「自虐史観」の実態を明らかにし、批判した本です。 「自由主義史観」を標榜する著者たちに...

本書の著者である西尾、藤岡両氏のほか、秦郁彦、小林よしのりらが中心メンバーを務める「新しい歴史教科書をつくる会」の運動は、大きなニュースになりました。本書は、これまでの歴史教科書を支配してきた「自虐史観」の実態を明らかにし、批判した本です。 「自由主義史観」を標榜する著者たちにたいして、宮台真司は「オヤジ慰撫史観」と揶揄し、養老孟司は、教科書に墨を塗っていたと発言するなど、盛んな論争の的となりました。 著者たちの自由主義史観に全面的に賛同するわけではありませんが、改めて本書を読みなおしてみると、従来の教科書の記述にも見なおすべきところがすくなくなかったように思います。コミンテルンの「三十二年テーゼ」に基づくカビの生えた近代日本史像がいまだに教科書のなかで支配的だというのは、「つくる会」の批判を待つまでもなく、左派の内部でとっくに批判されていなければならなかったはずです。 左派のほうでも、「つくる会」の教科書を批判するだけでなく、アナール学派の地域史研究の方法や歴史のナラトロジーなどの成果を織り込んだ、魅力的な教科書を提言できていたならば、扶桑社の教科書をめぐる論争ももっと実り豊かなものになっていたのではないかと、今にして思います。

Posted byブクログ