父の石楠花 の商品レビュー
原田康子さんが亡くなってから、もう15年経とうとしている。ここには私が知りたかった、昭和の頃の北海道がある。釧路の原風景は想像するばかりだが、札幌の暮らしには少しだけ馴染みがある。原田さんの言葉はたおやかで、昭和の人を表現するのに相応しかった。 私は札幌で生まれたが、最近戻って...
原田康子さんが亡くなってから、もう15年経とうとしている。ここには私が知りたかった、昭和の頃の北海道がある。釧路の原風景は想像するばかりだが、札幌の暮らしには少しだけ馴染みがある。原田さんの言葉はたおやかで、昭和の人を表現するのに相応しかった。 私は札幌で生まれたが、最近戻ってくるまで、本州を転々としていた。いよいよ北海道に住む、となった時、無性に知りたくなったのは、北海道で私がいない時代に暮らしていた人たちのこと。生まれる前の開拓時代の人たちのこと。さらに遡って、アイヌ民族や北方民族の人たちのことだった。こちらで暮らすにつれ、だんだんとその思いが強くなっていく。 それを著してくれたのは、北海道の、または北海道にゆかりのある作家たちだった。原田さんもそのお一人。「海霧」は、原田さんの一族がモデルになった。開拓の歴史に生きた女性たちの、圧巻の生き方を教えてくれた。 作家が亡くなると、書店で著書を見かけることは少なくなる。でも電子書籍ならすぐに手に入る。そういう時代になった。
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昭和3年釧路で生まれ、昭和31年ベストセラー、ロングセラー「挽歌」を発表、昭和34年から札幌で暮らし平成21年、81歳で生涯を終えた原田康子さん「父の石楠花」、2000.4発行、再読、上質な自伝的エッセイです。季節のいろ、遥かなる日々に、読むことの愉楽、いのちの躍動、人生の糧、追憶の底から の6部構成です。自らのこと、家族、夫のことを始め、読書、将棋、競馬、食事、酒、旅行などについても言及されています。将棋は頭脳による格闘技、「升田幸三物語」が面白かったと。また、藤沢周平の「驟り雨」も称賛されてます。 道東の女性作家、3人がすぐ浮かびます。「挽歌」の原田康子、「俺と師匠とブルーボーイとストリッパー」の桜木紫乃、「颶風の王」の河﨑秋子。原田康子(1928~2009)「父の石楠花」、2000.4発行、再読。上質なエッセイ。北海道に数年住んでいたこともあるからでしょう。何度読んでも、心にすっと響きます。釧路は海霧と湿原。札幌ははるかに温暖な気候。昭和34年からは、札幌・藻岩山の近くに住まれ、猫や野鳥と。冬の庭は千客万来。藤沢周平「驟り雨」の丁寧な解説、よく覚えています。13年前、81歳で亡くなられました。
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札幌在住で、2009年に亡くなられた原田康子さんのエッセイ 釧路での子供、青春時代のこと、結婚してから移った札幌での生活 小説の仲間のこと、他の方の小説の戦評など、盛りだくさんの本 白石区民センターの図書館で偶然見つけた本 もう、本屋さんに置いてあるとは思えないので、偶然に感謝 原田康子さんの『満月』と『聖母の鏡』はとても好きな小説 なのに、デビュー作で一番の話題作『挽歌』を読んでいないことに気づいた 読みたいなと改めて思う
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