ヒナギクのお茶の場合 の商品レビュー
バラエティに富んだ5作品を収録した作品集。 「枕木」は何と言っていいのか感想に困ってしまうが、絶えず焦点をずらされ横滑りしていくような感覚。 「雲を拾う女」何なの?哺乳ビンの乳首になってしまう(わたし)。火を吹き、鏡に映らないコウモリと呼ばれる女。寓話や幻想とは違う。あまりにも輪...
バラエティに富んだ5作品を収録した作品集。 「枕木」は何と言っていいのか感想に困ってしまうが、絶えず焦点をずらされ横滑りしていくような感覚。 「雲を拾う女」何なの?哺乳ビンの乳首になってしまう(わたし)。火を吹き、鏡に映らないコウモリと呼ばれる女。寓話や幻想とは違う。あまりにも輪郭がはっきりとし過ぎていて。意味とか脈絡とかそんなのよく分からないままに、ひたすら読まされてしまう。 「ヒナギクのお茶の場合」語の反復とか文体のリズムとか、読んでいて楽しい作品。友人ハンナへの語り手の好感が滲んでいる。 「所有者のパスワード」多和田さんにこんな作品あるんだ、と意外性に驚く。ラノベの恋愛モノ読んでコマ割りまで脳内で漫画に変換したり、難しい漢字の意味も分からず字面に官能性を感じたりする語り手。パロディーというか遊び心を感じる作品。
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- ネタバレ
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多和田さんの自由な文体が相変わらず面白い。 「電車に乗っていると、どうして電車なんかに乗っているのだろうと思ってしまう」 出だしから笑った。 静かなトーンの話からクスッと笑える軽快な話、と多和田さんの引き出しの多さが伺える短編集。 「枕から枕へ、今夜見る夢から明日の夜見る夢へ」とあるように、多和田さんに夢の世界に誘われたかのようにふわふわした余韻が漂う。 特に『目星の花ちろめいて』『所有者のパスワード』が好き。 『目星…』は多和田さんの紡ぐ詩のような言葉遊びが心地好く、続きが気になる終わり方でもっと読んでいたくなる。 『所有者の…』の姫子が夢中で読んでいた「ボクトーキタン」(永井荷風の『濹東綺譚』らしい)が気になる。何度もニヤリとなった。
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短編小説が集まったものである。アメリカ風のものが出てくる。タイトルのものは、本人の友人である女性が、舞台美術を仕事としており、疲労のあまり、赤いペンキの上に突っ伏して眠り、それを見た友人が、死亡したと勘違いして自分に連絡してきたという話である。
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全体的にどこか抽象的で掴み所がなくて、でもとても引き込まれた作品。私は「目星の花ちろめいて」と「所有者のパスワード」の摩訶不思議感が好き。特に「所有者~」は本の虫の姫子が本ばかり読んでるがゆえに無知であることで危ない目に遭ったり現実とごちゃごちゃになったりしつつ、本ばかり読んで...
全体的にどこか抽象的で掴み所がなくて、でもとても引き込まれた作品。私は「目星の花ちろめいて」と「所有者のパスワード」の摩訶不思議感が好き。特に「所有者~」は本の虫の姫子が本ばかり読んでるがゆえに無知であることで危ない目に遭ったり現実とごちゃごちゃになったりしつつ、本ばかり読んでるがゆえに難を逃れる様が滑稽ですごく面白かった。
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見ると1990年代に書かれた話ばかりなのに、全く古さを感じさせない。 目星の花ちろめいてのあやめびとの話は他の作品でも使われていたモチーフだったけど、印象がまた違くてよかった。 20131221
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目星の花ちろめいての「あやめびと」の話を膨らませたのだと知った、あの本。 現実を注意深く写実しているのに知らないうちに・・・エアーポケット吸い込まれたように、違う次元に入り込みそこがどこだか読んでいてわからない。わからないんだけど現実感はいやに濃厚でつまさきちょっと浮いた感じの...
目星の花ちろめいての「あやめびと」の話を膨らませたのだと知った、あの本。 現実を注意深く写実しているのに知らないうちに・・・エアーポケット吸い込まれたように、違う次元に入り込みそこがどこだか読んでいてわからない。わからないんだけど現実感はいやに濃厚でつまさきちょっと浮いた感じの読書。古語のような日本語と外国の固有名詞が組み合わさって確実にエイリアン的な自分がそこにいる。こういった境界・こういった環境で書く人を知らなかったから興味深く、もう少し知りたいと思う作家です。
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昨日読了 作者の日常がそのまま 得体の知れぬ世界に溶け込んでいく、 「いと怪しく稀有な」短編集。 著者が内田百閒「冥途」の解説を担当しているのは、 なるほど、うなづける。 掌編『目星の花ちろめいて』 における自由な文体にくらくら眩暈。
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ドイツ在住の芥川賞作家、多和田葉子。 いま個人的に一番気になる人。彼女のエッセーは読んだけど、文学作品を読むのは初めて。 どの短篇も独特の不思議世界が構築されてます。 この世界観と言葉の感覚かなり好きです。 クセがあるので好みは別れそうだけれど。
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「雲を拾う女」が最も面白い。次に表題作。見れば前者は95年に後者は96年に発表されたもので、そのほかの作品(「所有者のパスワード」「枕木」「目星の花ちろめいて」)は2000年前後に書かれている。これらは多和田文学におけることばあそび(言葉の語感から喚起されるイメージで小説を展開し...
「雲を拾う女」が最も面白い。次に表題作。見れば前者は95年に後者は96年に発表されたもので、そのほかの作品(「所有者のパスワード」「枕木」「目星の花ちろめいて」)は2000年前後に書かれている。これらは多和田文学におけることばあそび(言葉の語感から喚起されるイメージで小説を展開していくスタイル)への習作といったイメージ。「光とゼラチンのライプチッヒ」の、音とことばに執拗にこだわる独特な世界観と、これらの作品は近いと思う。 「雲を拾う女」では、所有や主体や存在に対して直接的な説明が随所に織り込まれている。ここでは主体はものである(わたし)であり、その視点から外側にアプローチをかけているのだが、語り手としてものを選び、冷静に行き交う人々の所作を描くというのはなかなか考えつかないなあ、と。実験的かつ哲学的な要素を多分に含んだ短編。
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『雲を拾う女』 「悪魔は正義感が強く、理屈に合わないことが嫌いだと聞いた」 「心なんて、もともと、自分の所有物じゃないのよね、それが、 勝手にこの中で、鳴っていて、なんだか、本当に、他人事みたい、 心、奪われてしまって、心臓、心臓」
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