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おろおろ草紙 の商品レビュー

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2021/09/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この人しか書けない小説とは、なんとすばらしいのだろう。 北の地の厳しさが人を死なせていた。土地をこんなふうに書ききるすごさがまず、この小説にはある。 歴史小説はあまり読まないが、そんなこと関係なしに文章の凄まじさで読めてしまったなあ。 すこし前に読んだ剥製が男女が死ぬ話だとしたら、おろおろ草紙の四篇は土地の厳しさで人が死ぬ話である。より三浦哲郎の奥をみたのは今回のおろおろ草紙だった。形式としては物語なのだけど、その中で三浦しか知らない東北の感覚が書かれていたと思う。 ちょっと確認してみたら二篇目の「暁闇の海」は、けっこう歴史寄りの話だったみたい。でも四篇を総合して、北の厳しさを知らせてくれるようなそんな小説だとやっぱりおもう。

Posted byブクログ

2011/11/20

おろおろ草紙というタイトルが、この作品集全体の内容をとてもよく表している。 何が悪いわけでもなく、誰かのせいでもなく、かといって虚無感に襲われるというのでもなく。ただ、何かがあって、そういう状況の中で右往左往して、それでも、ただ、生きて。 流されているというわけではない。ぼんや...

おろおろ草紙というタイトルが、この作品集全体の内容をとてもよく表している。 何が悪いわけでもなく、誰かのせいでもなく、かといって虚無感に襲われるというのでもなく。ただ、何かがあって、そういう状況の中で右往左往して、それでも、ただ、生きて。 流されているというわけではない。ぼんやり生きているというのとも違う。 状況は壮絶だ。ばたばたと人が倒れていき、「死」がごろごろしている状況だったり、一歩違えば生死の狭間であったり、そして、他人を喰わないと自分が死ぬ状況だったり。 とても日常的とは言えない。むしろ、地獄のような状況だ。しかし、それなのに、人はどこまでも人で、それ以上には決してならない。また、世界が奇跡を起こすこともない。時間の流れも人の能力も、どこまでも変わらないまま、ただ、淡々と季節はめぐり、冬が終われば春が来る。 人は生きる、しかしそれと同じくらい人はどこまでも死ぬ。 そんな状況を静かな筆致で描写するこの本の作者、三浦哲郎さんは、6人兄弟の末っ子だそうだが、この5人の兄・姉たちのうち、なんと4人が自死、あるいは失踪しているそうである。 人は死ぬ、しかしそれと同じくらいどこまでも人は生きる。 少々読み通すのは辛い本だったものの、そんな生い立ちを持つ作者のあとがきが印象的だったので、読む際はぜひあとがきまで。

Posted byブクログ