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ロレンス短編集 の商品レビュー

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2021/08/04

文学好みの媚薬というところだろうか。 新訳で「チャタレイ夫人の恋人」を読んだ時に劣らない高揚感があり満足した。ロレンスはイギリスが自慢してよい、稀有な作家である。 陰影のある繊細かつ大胆な人生を切り取ったロレンスの世界で、13編みなそれぞれにいいが、特に 「薔薇園の影」「菊...

文学好みの媚薬というところだろうか。 新訳で「チャタレイ夫人の恋人」を読んだ時に劣らない高揚感があり満足した。ロレンスはイギリスが自慢してよい、稀有な作家である。 陰影のある繊細かつ大胆な人生を切り取ったロレンスの世界で、13編みなそれぞれにいいが、特に 「薔薇園の影」「菊の香」「春の陰影」「盲目の男」「太陽」「二羽の青い鳥」 が数々の傑作長編を髣髴させ、イメージが思い浮び楽しんだ。 薄紫色(ヘリオトロープ)、グローリアの薔薇、罌粟(けし)、月桂樹、針金雀枝(ハリエニシダ)、榛(ハシバミ)、釣鐘草(ブルーベル)、柊、車葉草、ラッパ水仙、西洋季(プラム)、桜草、勿忘草、金盞花、塩釜菊、姫萩、………。 花々が咲き乱れるイギリスの美しい自然の中のうつろい、その陰影になぞらえての心理描写、渾然、陶酔、とっぷりと浸かってしまう。 人間の営みのおける人間性を抉り出し解放する、けして古くない心理描写。 昔読んだ『息子と恋人』も印象深かったし、もっと翻訳されてもいいのだけれど現在作品は少ない。

Posted byブクログ