17歳の殺人者 の商品レビュー

藤井誠二(著者)

2024/08/15

年齢差や腕力だけで築いたプライドだけで生きていこうとする。肥大化したプライドはぜい弱で、淀みに溜まった水の中でしか通用しない代物だ。水は外部へと流れず、少しずつ腐っていく。（p.113）
そこにいるのに、いないと思うことのできる分裂した感覚。「支配者」の意思にしばられ、コントロールされるだけの空洞化した身体。（p.153）
…だんだん、教祖を演じるというか、そのためには普通のことをやっていたんじゃ、教祖にはなれないからね。それは、少年の世界だって同じですよ。（p.184）
理由ない暴力ほど、恐ろしいものはない。理由がないということは目的もないということ。だから止まることもないのだ。（p.199）
「…罪と罰にはバランスがあるのです。人を殺したということは最大の犯罪です。殺された方にはなんの手だてもとられないのに、殺した方にだけ手厚い保護の手だてがとられ、罰が与えられない。少年法で裁かれ、少年院に短い期間だけ送られるということは罰ではないのです。加害者がやったこと、被害者がやられたことに対する決着がないと遺族はなにも前へ進めないし、考えることもできないんです。罪に対する罰という決着です。これは、厳罰化ではありません」（p.246）

鬼畜の所業ともいえる行為で女子高生を虐げ、殺害し、コンクリート詰にするという信じられない事件が私が生まれる前に起こっていたことにあまり現実味がなかった。主犯格以外にも関わっていた人物はいたが、殺そうと思って暴力を振るっていた者は少なく、命令されたからやっていたということが多かった。見ている人がいるのに、殺されるまで誰も何も打ち明けようとしなかったということが恐ろしい。本当は逃げたい、誰かに報告したいという方もいたかもしれないが、執拗に電話が来て、脅迫されると逃げられない気持ちもわかる気がする。逮捕された中には、事件が明るみになり、逮捕されてようやく、解放されたという少年もいたのではないだろうか。加害者の詳細な情報は伝えられず、被害者遺族だけが、置いてきぼりにされるなんて、とてもおかしな話だと思うが、少年法があるかぎり、どうしようもできない事実なのだろう。罪を犯した少年が少年院に入ったからと言って更生するわけではないし、世に放たれ、また罪を犯すかもしれないと考えると、恐ろしく思う気持ちもある。
また、リンチ事件など、あまり報道がされず、有耶無耶にされてしまった事件もある。被害者はなんのために見ず知らずの人から殴り殺されたのか。被害者自身も無念が大きいと思う。

2011/12/04

一つの事件の裏の様々な要因が隠れていた。何が悪かったのか一言で語られないもどかしさを感じた。一つ一つの要因が蜘蛛の巣のようにつながって中心に集まった結果がこの殺人だったようだ。
1988女子高生コンクリート詰め殺人事件
1994那古野・宮田捻之君殺人事件
1996大阪・武孝和君殺人事件
2000佐賀バスジャック殺人事件
この４つについて主に書いてあった。どの事件にも共通して言えるのは被害者側に対する配慮がどれも不十分だったということだ。少年法では彼らはいっさい情報を得ることができないようになっているらしい（改定前）。この本ではそのことが分かったのが一番大きな収穫であった。

2009/10/04

主に取り上げられている事件は「女子高生コンクリート詰め殺人事件」です。新聞やテレビでは知りえない残虐の限りをつくした犯人たちの行為にぞっとしました。自分の虚栄のために（かどうかはしりませんが）ここまで、人にたいして凶暴になれるのか私には理解できません。
犯人それぞれのバックグラウンドを読むと、「もしここでこうなっていればこんなことにはならなかったのでは･･･」と思うこともありましたが、同じような環境におかれても、人を傷つけようとはしない人もいることを考えると、やはりおかしいと思います。
そのへんのホラーよりよっぽど怖い。
同じ年齢の子に知ってほしいけど、安易にすすめてよいのか迷いました。