わくらば の商品レビュー
三浦哲郎の短編集モザイク三冊目。 わくら葉のシミで父親の肌を思い出す。自分の肌もそうなっているのだろう。/『わくらば』 35歳の巴は、温泉地で80歳以上の老人の添い寝をする。ある朝隣の老人が冷たくなっていることもある。だが老人も、その遺族も、そして巴も、それで満足なのだ。...
三浦哲郎の短編集モザイク三冊目。 わくら葉のシミで父親の肌を思い出す。自分の肌もそうなっているのだろう。/『わくらば』 35歳の巴は、温泉地で80歳以上の老人の添い寝をする。ある朝隣の老人が冷たくなっていることもある。だが老人も、その遺族も、そして巴も、それで満足なのだ。/『そいね』 あっちゃ飛んだか こっちゃ飛んだか 弟恋し 弟恋し。 弟が食べ物を独り占めしたと疑った兄は弟を殺し腹を割く。しかし弟の腹にはもっと粗末な食べ物しか入っていなく後悔した兄はほととぎすになり弟を探しているという。 姑は、臨月の嫁になぜ腹を裂くというような昔話を聞かせたのだろう?やはり息子を奪った女への憎しみがあったのか? 昔の話だ。ほととぎすのことも、姑とのことも。/『ほととぎす』 厠で入れ歯を落としてしまった。取ろうとして体が動かなくなってしまった。まさか自宅でこんな落とし穴があるとは。/『おとしあな』 死んだ人の帽子をもらった。何故かその日は体が勝手にいつもと違う行動をするんだ。まるで誰かに導かれているようだ。/『チロリアン・ハット』 意識不明の旧友に語りかけると瞬きで答えるのだと、彼の妻は答えた。/『まばたき』 めちろ、文字にすれば目露で涙のことだ。日米友好条約のために贈られた人形の一体のエリザベスは、戦中戦後でも壊されずに大事に残された。日本で残った数少ない人形たちの展覧会、それはまるで70年ぶりの同窓会ではないか。そして帰ってきたエリザベスを愛おしく世話する。/『めちろ』 今の彼女との待ち合わせの場所でばったり昔の彼女に出会って別れた。/『あめあがり』 なんもかも、この世は神様のおぼしめしなのせ。枝にかかった布のはためきが婆さんのつぶやきに聞こえる。/『おぼしめし』 警察の手入れを抜けたストリッパーと、匿った男。/『かけおち』 20年ぶりに東京に出たらやたらに人にぶつかる。病院に行ったら地元の病院の紹介状をくれた。これがおのぼりさんのお土産だとは。/『おのぼり』 神経を患った妻が突然犬を買ってきた。妻は明るくなったのだが、ある日。/『パピヨン』 知り合いのお葬式に行った帰り、同じ名字でお葬式を出している家があった。間違えたのか?/『つやめぐり』 神経がやられて入院して退屈しのぎの夜歩きがまるで本物の夢遊病者のよう。/『ゆめあそび』 妻が倒れたが、娘たちが面倒を見て夫である自分はまるでみそっかす。/『みそっかす』 嫁に出る娘を送る親の複雑さ。/『やどろく』 井戸端で母が流した涙は灰に落ちた。私はその涙の塊を壺に集めていたんだ。/『なみだつぼ』
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※このレビューにはネタバレを含みます
17話からなる短編集。 1話が1話が短いためするりするりと読めた。 著者と世代があまりに違うためか、行間から年月の重みを感じる。 文章がスマートで綺麗だと思う。
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