天使の記憶 の商品レビュー
作品を読むのは二作目になるが、時の流れの中にある人々の息づかいを感じさせるのがうまい作家だと思った。ドラマにならない人生などないということを感じさせる。期待通りの面白さだったが、カバー裏などで衝撃の結末などとやたらと煽るのはやめてほしい…。
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8月になると終戦の日があるためか、戦争を回想する報道が耳に入ってきます。そういうわけでこの本を手に取ったのではないのですが、今回は戦争に関係のある本を取り上げたいと思います。 天使の記憶。舞台はフランス、パリ。1957年にもなれば大戦のことなど忘れようと、世間はしているのかも...
8月になると終戦の日があるためか、戦争を回想する報道が耳に入ってきます。そういうわけでこの本を手に取ったのではないのですが、今回は戦争に関係のある本を取り上げたいと思います。 天使の記憶。舞台はフランス、パリ。1957年にもなれば大戦のことなど忘れようと、世間はしているのかもしれません。ラファエルはフルートの演奏家。田舎の裕福な実家に住む母に勧められるまま、自宅に家政婦を雇うことになります。来たのはドイツ人女性サフィー。何事にも無気力、無関心、無感動、無抵抗… そんな彼女に惹かれるラファエル。彼女はあっさりと結婚を承諾し、ふたりには息子が生まれます。幸福なラファエル、しかしサフィーは楽器職人アンドラーシュに一目惚れしてしまい、そして恋に落ちて…。 本当に物語のような一目惚れ(!)から織りなす展開で、恋愛関係よりも、要所要所で回想される三人の記憶─戦争に関する体験─の方がリアルで印象に残りました。“ドイツ人”という単語が出てきたときの張りつめた緊張感。各国の憎愛が三人の関係に深い影を落としていきます。読み終えてから思ったことなのですが、どの国にも傷ついた人はいて、それは勝った方、負けた方、どちらかが善悪かと言う論争なんて、意味が無いものなのではないかと思います。日本も他国を傷つけた国であり、そして傷を負った国です。複雑な事情については違いがありますが、『戦争』について、言葉には語り尽くせない感情が傷ついた人たちにはある、と言うことをすこしでも知ることができる1冊ではないでしょうか。 このころのナチやユダヤ人をテーマにした話は、感動するものが多いと言っていた人がいましたが、私もよくすばらしい作品に出逢いうことがあります。『運命ではなく(国書刊行会/刊)』という収容所の話を書いた本なのですが、とても切り口が鋭くてお勧めです。もし機会があったら読んでみてはいかがでしょうか。
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静かで美しく哀しい雨音の旋律を聴いているような小説でした。 この小説には3人の全く違うタイプの人物が登場しますが、その誰もを遠く感じるし、誰もの心が透けて見えます。しかし近づけない傍観者であり続ける私はこのせつない調べに酔ってゆきます。 なぜ? それはこの小説を読んだ人だけ...
静かで美しく哀しい雨音の旋律を聴いているような小説でした。 この小説には3人の全く違うタイプの人物が登場しますが、その誰もを遠く感じるし、誰もの心が透けて見えます。しかし近づけない傍観者であり続ける私はこのせつない調べに酔ってゆきます。 なぜ? それはこの小説を読んだ人だけが味わえるものだと思います。
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