睡蓮の長いまどろみ(上) の商品レビュー
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すごくゾクッとする作品だねぇ、これ。 確かに主人公の順哉はなかなかな過去を背負っているけど それでも妻とも、父の後妻さんとも 良好な関係を築いているんですよね… ただその陰に、どうも怪しげな、 とてつもない危険な思想がチラホラと出てくるのです。 それは順哉の前で意味深な死に方をした ひとりのうら若き女性… 虚偽の注文を受けた後に 怪死しているんですよね。 そしてそれを同化する癖が… なんかイヤーな作品。
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アッシジ郊外で会った産みの母、そして自分の前で自ら命を断った若い薄幸の美少女。そして、北海道に戻った母への偽名を騙っての接近。主人公の気持ちになり、せつなく人生の無常さを想わされます。
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上下巻、久々に読みごたえのある本だったなぁと思います。 宿命、という言葉が重くのしかかる物語でした。一人の少女の死から始った物語は、主人公、世良順哉と三十数年前に離別した母親とを引き合わせ、別れの謎を解き明かす旅でした。アッシジ、東京、大阪、北海道どの土地も主人公を取り巻く物語に...
上下巻、久々に読みごたえのある本だったなぁと思います。 宿命、という言葉が重くのしかかる物語でした。一人の少女の死から始った物語は、主人公、世良順哉と三十数年前に離別した母親とを引き合わせ、別れの謎を解き明かす旅でした。アッシジ、東京、大阪、北海道どの土地も主人公を取り巻く物語においては色を失ってしまう、ただの町でしかないほどに、少しずつ明らかにされる別れの真意は重たいものでした。 母を突然の行動に駆り立てるほどの宿命の重さ。少女の自殺と二通の手紙。若い夫婦の別離の約束。 そこには主人公の与り知らぬ多くの物語が幾重にも重なって存在します。すべてが一つに繋がっていく下巻の疾走感が私は好きだと思いました。 前回読んだ「人間の幸福」でも思ったのですが、この作家は人の嫌な面、汚い面を描くのが上手い、と思います。 会話や動作の端々から、主人公が感じる嫌悪感や苛立ち、その他の負の感情が十分なほどに伝わってくるのです。それは確かに重たいけれど、でも、人が生きているということが嘘偽りなく描かれている証では無いかと思います。 (2004年5月10日)
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