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歴史家の仕事 の商品レビュー

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2020/06/29
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師曰く、歴史の真実は史料にあり、と。 科学的・批判的な態度で史料に基づく歴史叙述を徹底する。ゆえに「自由主義史観」、この本では具体的に西尾幹二『国民の歴史』は「怠惰な文筆家」の著作という。なるほど。 陸奥宗光『蹇蹇録』の史料比較や、『戦史叢書』の「機密保持」に基づく編集方針と記述の変更、公刊史料集の編纂過程での作為性など、一般人は目の前にある資史料を基に考えてしまうけど、まずその資史料自体を疑ってみる態度、というのがやはり専門の「歴史家」だなぁ、と感嘆。 長年の思いが少しすっきりしたのが、「ミクロとマクロの往復」という考え方。自分の関わる分野では、科学の厳密性を求めるあまり限定的な特殊研究=断片ばかりで、現実はそうじゃないでしょ?と言いたかったけど、「マクロ(全体)との関係を問題意識として持ち続ける」ことが大事、と著者はいう。そうですよね。 ところが、これらが逆に弱みにもなっているのが、何と言うか…。 第1章で戦後の「国民的歴史学運動」というものに触れて、運動は頓挫してしまったが未だ総括はされていないという。学問には批判的態度を取っても、それを基にした自分たちの運動には何十年経っても批判的になれない弱さ。 西尾を批判し、科学的な態度を歴史学に求めながら、史料編纂では作為性があることを明らかにする。これ、自然科学の実験だったら大問題ですよね。この甘さを甘受しつつの科学的、という弱さ。 もう一つ何かあったけど忘れた。

Posted byブクログ