死ぬためのエチケット の商品レビュー

シーリア・フレムリン(訳者),田口俊樹(訳者)

2023/05/25

どこにでもありそうな家庭の、辛辣にも思える悲喜劇を描いたミステリ短編集。どれもがちょっとブラックな読み心地です。
お気に入りは「夏休み」。誰もが楽しむはずの「休暇」が嫌いな主人公の老女が、家族から無理矢理に計画された旅行を回避する方法を試行錯誤する物語です。……あー、なんだか彼女の気持ちは分かります。私も旅行に行くより家でゆっくりしたい派なので、とてもよく分かるのですが。しかしそれがまさかこんなことになってしまうとは……！
老年男性を主人公にした「高飛び込み」もユーモラスで好きです。老いた上に病気も抱え、妻との関係も昔と変わってしまった彼が、命をかけて臨んだ一大決心。彼の決死の覚悟にハラハラさせられ、彼がとてもカッコよく思えたりもするのですが。しかしこれもまたまさかの結末。ある意味この短編集最大の悲劇なのかもしれません。
シニカルでブラックな物語が続いた後、ラストの「奇跡」ではほっこりさせられます。なんとまあ、とんでもない奇跡があったものです。

2011/03/28

20110327読了
とてもシニカルで軽快な短編集。
13篇も入っていて、オチがブラック。
気分が下がってるときに読むとけっこうきついです…
パターンもワンパターンなものもあったりして、
あたりはずれもあったけれど、全体的には面白かった。

収録作品
死ぬにはもってこいの日
危険なスポーツ
高飛び込み
逞しい肩に泣きついて
悪魔のような強運
博士論文
夏休み
ボーナス・イヤーズ
何より必要な場合には
死ぬためのエチケット
すべてを備えた女
テスト・ケース
奇跡

2009/10/31

　とってもシニカルな短編集。老母を介護する一人娘、っても彼女も高齢なのだが、二人が交わした約束の皮肉な結果の｢死ぬにはもってこいの日｣のシニカルさは、強烈だった。ちょっと雰囲気がワンパターンといえばそうだが、読み応えがあった。
　面白かった。

2009/10/04

決して厚い本じゃないのに13編もの短編が入っています。それだけ1編は短いのに、思いも寄らないどんでん返しのあるちゃんとしたミステリになっているのに驚きです。しかも喜怒哀楽、いろんな感情が詰まっているからさらにすごい。基本的に視点はシニカル。だけど冷たい感じはしないのが不思議です。泣きながら笑うしかないような結末を迎えた登場人物に、呆れながらも一緒に泣きたくなる。高齢女性が沢山出てくるのでもしかしたら･･･と思ったら、やっぱり結構なお年を召してから書かれた作品集でした。解説を読んで「スペンサーなんて大嫌いよ！」と話していたと聞いてさらに好感を持ちました。そのお相手だったドロシー・ソールズベリ・デイヴィスの作品も読んでみたいです。