弧高の将軍 徳川慶喜 の商品レビュー
私たちは「歴史」としての徳川慶喜しか知りません。 それも、うすっぺらい紙の中にいる「德川慶喜」です。 徳川慶喜が水戸斉昭の子だということは何となく認識していたのですが、この本で公家である有栖川家の血も引いていることを知りました。 水戸家は「尊王」を遵奉しています。 そんな水戸家...
私たちは「歴史」としての徳川慶喜しか知りません。 それも、うすっぺらい紙の中にいる「德川慶喜」です。 徳川慶喜が水戸斉昭の子だということは何となく認識していたのですが、この本で公家である有栖川家の血も引いていることを知りました。 水戸家は「尊王」を遵奉しています。 そんな水戸家の子である慶喜が将軍になる。しかも、幕末という「朝廷」と「幕府」の対立が頂点に達している時期です。 そこで慶喜は何を考え、どう行動したのか。 「歴史」の中で学ぶことというのはただ「出来事」をなぞるだけで、そこに「感情」など一切入っていないように思えます。実際、私たちが感じる「歴史」はそういうものです。 しかし実際には、そこにやりきれない感情や葛藤が満ち溢れています。というより、その感情や葛藤が「歴史」を生み出すのでしょう。なのに、私たちはそれを感じ取る機会を持たずに「歴史」を学ぶのです。 なぜ、こういう行動を取るのか。 そこには必ず「理由」があります。 慶喜は鳥羽・伏見の戦いで味方を置き去りにし、江戸へ逃げ帰ります。そのことから、「卑怯」だとして歴史的にはかなり評価が低い将軍です。 しかし、それにも「理由」があるのです。 その「理由」に関してはいろいろと論じられていますが、私はこの本に書いてあることが一番納得いくような気がします。 それは、それまでの「慶喜」を作ってきた「歴史」の中に答えがあると筆者が考え、それを紐解くことでその「理由」を明かしてくれるからです。 私はこの本の中で一番好きなのが、父・斉昭公の慶喜に対する愛情の部分です。 今の私たちが子供に対して愛情を注ぐように、幕末期の藩主も子供に惜しみない愛情を注いでいたのです。 そして、慶喜を養子に迎えた12代将軍家慶も、慶喜に対して愛情を注ぎました。 幕末という荒れた世にあっても親子の愛情というものを感じられて、心が温かくなりました。
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