プロパガンダ の商品レビュー
プロパガンダとは「大衆説得の技法」のことである(9頁)。本書は,その名が示すとおり「ひとが説得されやすいのはどのような状況なのか」を社会心理学の知見に基づいて考察しているものだ。著者はふたりとも心理学者である。本書を読むと,相手の感情を刺激したり短絡的な思考を促したりするといっ...
プロパガンダとは「大衆説得の技法」のことである(9頁)。本書は,その名が示すとおり「ひとが説得されやすいのはどのような状況なのか」を社会心理学の知見に基づいて考察しているものだ。著者はふたりとも心理学者である。本書を読むと,相手の感情を刺激したり短絡的な思考を促したりするといったメッセージの伝え方次第で,メッセージの内容とは関係なく,送り手は受け手の信念や意見を変えられるのだということがよく理解できる。 本書の目的は,本書で紹介された説得技法を用いてひとを説得するための「技術」を向上させること(営業成績を高めたり,社内で対立するひとの意見を封じ込めたりすること)ではない。そうではなくて,多くのプロパガンダが存在していて現実に頻繁に用いられているという事実を知り,プロパガンダが説得に有効である理由を理解することで,あからさまな説得から自分を守れるようになることである。多くの情報にあふれ,様々な説得術が不断に用いられている現代社会において,本書には一読の価値がある。 本書の各節では具体的なプロパガンダの事例が紹介されている。例えば,ある商品を販売する状況を想像してみよう。この場合には,その商品の長所のみを強調するべきなのか,それとも長所と短所を説明した後に長所が短所を上回ることを説明するべきなのだろうか。このような事例紹介に次いで,説得がうまくいくための方法と,なぜ説得がうまくいくのかの理由が解説される。個人的には,解説の中で先行研究における実験結果が紹介されているのが有益だった。 著者のひとりであるプラトカニス教授の研究テーマが多岐にわたるためか(経済詐欺犯罪,テロリスト独裁者によるプロパガンダ,マーケティングと消費者行動,そしてサブリミナル知覚),本書では非常に豊富な事例が取り上げられている。そのため,本書を読み進める中で自分の身近なケースに置き換えて納得できることが多かった。この点でも本書はおすすめできる。
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プロパガンダの時代、つまり現代に生きる私達は、処理能力をはるかに上回る量の情報に囲まれて生きている。 しかも、その中の多くは事実ではなく事実もどきだ。もっともらしい事実もどきのために、時間は浪費され、恐ろしい混乱が引き起こされている。 しかし、消費者や有権者は事実もどきに立ち向か...
プロパガンダの時代、つまり現代に生きる私達は、処理能力をはるかに上回る量の情報に囲まれて生きている。 しかも、その中の多くは事実ではなく事実もどきだ。もっともらしい事実もどきのために、時間は浪費され、恐ろしい混乱が引き起こされている。 しかし、消費者や有権者は事実もどきに立ち向かう術を持っている。それは、事実もどきを作っている人びとに直接疑問を提出し、立ち向かうことだ。そうすれば、広告主や政治家の多くは事実もどきを事実に置き換えることを余儀なくされるだろう。 都合の悪い現実から、または物事の本質から注意を逸らすために、しばしば迷信が使われる。私達は簡単に我を忘れてしまう。 自分の決断を疑うより、信じたいことを信じることの方がたやすい。 過ちを犯さないのは不可能だけど、努力を続けることはできる。 懐疑は説得への抵抗力となる。 キケロ アレン・ギンズバーグ エーリッヒ・フロム クルト・レヴィン オリヴァー・クロムウェル 『オレステス』アイスキュロス
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私たちは日々多くの広告・宣伝発するの絶え間ない声を聞かされている。テレビでも、電車でも、お店でも、ウェブ上などの仮想空間でも例外なくだ。そして、自分が思っている以上にそれらの影響を大きく受けているのである。本書はそんな広告・宣伝の方法と効果、影響について解説している画期的な本で...
私たちは日々多くの広告・宣伝発するの絶え間ない声を聞かされている。テレビでも、電車でも、お店でも、ウェブ上などの仮想空間でも例外なくだ。そして、自分が思っている以上にそれらの影響を大きく受けているのである。本書はそんな広告・宣伝の方法と効果、影響について解説している画期的な本で、自己防衛術を学ぶために、(あるいは宣伝する側としても)うってつけの内容になっている。 説得の戦略を打ち破るための有効な方法として以下のように ・説得する側は何を得るのか。 ・なぜこうした選択がこのような形で私に提示されているのか。他の選択肢はあるか、こうした選択肢を提示する他の方法があるのか ・推奨されている選択肢以外の選択肢を選ぶと何が起こるだろうか。別の選択肢を支持する論点は何か。 自問することであると著者はいう。 本書に挙がられている様々な説得過程に関する知識を得ることによって対抗できるようになることも多いだろう。多くの人に読んでもらいたいと思った。
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セールスから政治など様々なプロパガンダのやり方、その対策について説明してる本。 普段自分が接する店員などが知ってか知らずかプロパガンダのセオリーに従って振舞っていることに気づかされる。 本としては読みにくかった。なんかあまりすっと頭に入ってこない。 訳が悪いのか。
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米国・煽動宣伝のものすごい量の事例集。その蒐集ぶりには感服。 でもずらずら~と事例を分類陳列し“煽られないようにしようね”な内容。 読み進むほど文中強く否定されてるヒトラーの弁「大衆は無知だ」が正しく思えてしまう本です。 なお日本側出版元の販促上、チャルディーニ『影響力の武器h...
米国・煽動宣伝のものすごい量の事例集。その蒐集ぶりには感服。 でもずらずら~と事例を分類陳列し“煽られないようにしようね”な内容。 読み進むほど文中強く否定されてるヒトラーの弁「大衆は無知だ」が正しく思えてしまう本です。 なお日本側出版元の販促上、チャルディーニ『影響力の武器http://booklog.jp/users/donaldmac/archives/4414304164 , http://booklog.jp/users/donaldmac/archives/4414304172』の併読を勧めてますが、著者どうしの直接関連は別にありません。 むしろJ.ケープルズ『コピーライティング http://booklog.jp/users/donaldmac/archives/4478004536』 R.A.グーラ『論理で人をだます法 http://booklog.jp/users/donaldmac/archives/4022500840』 L.シガー『ハリウッド・リライティング・バイブル http://booklog.jp/users/donaldmac/archives/4750000655』 等併読のほうが訴求技能は磨かれるんじゃないかなぁ。
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日本でプロパガンダと言えばまず政治的な宣伝がイメージされるが、本書で扱う対象の半分以上は商業的な広告技法である。プロパガンダの目的は、自分の意図した通りの結論を相手が選択するようにコントロールすることにある。従ってその本質は「説得戦略」である。 正しい情報を伝えることで相手...
日本でプロパガンダと言えばまず政治的な宣伝がイメージされるが、本書で扱う対象の半分以上は商業的な広告技法である。プロパガンダの目的は、自分の意図した通りの結論を相手が選択するようにコントロールすることにある。従ってその本質は「説得戦略」である。 正しい情報を伝えることで相手の熟慮に基づいた判断を求めるのは、説得ではなく単なる情報提供に過ぎない。本書では、相手の判断をコントロールする具体的な手法が数多く提示されるが、基本的には「熟慮させないこと」がポイントのようだ。イメージ戦略であるとか注意を本質から逸らす装飾的技法であるとか、人間心理を利用して相手が自発的に自分の考えを改めたくなるように仕向けるとか、そういう手法(というか手口)である。 商売をしていれば人を説得することは多々ある。紹介されるテクニックには、営業マンなら無意識のうちにやっているような例も多い。それが倫理に反するやりかたかどうかは意見が分かれるだろうが、アプローチされる側に立つ場合の心構えとして知っておくことは重要だ。 しかし本書で最も印象深かったのは、そういう説得手法の数々ではない。「説得手法をあらかじめ知っているだけでは、それらに対抗できない」という指摘だ。これは意表を突かれた。自己説得を促すような心理的手法は強力であり、相手が自分を説得しようとしていることがわかっていてもなお抵抗できない。言われてみればその通りだろう。 それにしても巷にはあからさまなプロパガンダが溢れている。本書が執筆されて10年以上経つが、書かれている内容は少しも古くなっていないのは、きっと良くないことだと思う。
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なにが説得の効果をもつか知ることによって、ナチスのような悲劇をふせぐことができる。 そのために説得過程に関する知識を得ることが大事だ、と筆者は考えている。 また、それによって本当の問題に関しての議論ができるようになる、という効果もある。 以下、すこしずつ引用。 『現代のプロパ...
なにが説得の効果をもつか知ることによって、ナチスのような悲劇をふせぐことができる。 そのために説得過程に関する知識を得ることが大事だ、と筆者は考えている。 また、それによって本当の問題に関しての議論ができるようになる、という効果もある。 以下、すこしずつ引用。 『現代のプロパガンダについて、プロの説得者が学んだ事実が五つある。 ●広告に「新しい」「素早い」「やさしい」「向上した」「いま」「突然」「驚くべき」「発表する」が含まれていると、その商品がよく売れる。 ●スーパーマーケットでは、お客の目の高さの棚に並べられた商品がもっとも良く売れる。(略) ●漫画のキャラクターや歴史上の人物よりも、動物、赤ん坊、セックスアピールを用いた広告のほうが、商品がよく売れる。 ●スーパーマーケットでは、通路の端やレジの近くに置かれた商品がよく売れる。 ●バンドル・プライシング―たとえば、一個五〇〇円の品を二個一〇〇〇円にする―は、客にとって商品「価値」を高める。 』 最後のが意外だった。今度ためしてみよう。そして、店で観察をしてみる。 もうひとつ意外に思ったのが、説得力のあることを矢継ぎ早に言うよりも、論拠の弱いメッセージを矢継ぎ早に言うほうが効果がある。 たしかに、論拠がよわいほど言い返せるから、あたまのなかに残るんだろうな。 そして、役立つと思うものは 『話し手が確信をもっていると、受け手はそのメッセージを受け入れやすくなる』という部分。 ひとに話すときは、つねに確信をもって話そう、ヒトラーのように。 ただし、絶対的な真実などないということを肝に銘じておく。 具体的には、だれか反論をしてくれる相手をつねに傍においておく。 そうすれば、別の一面からの世界が分かるし、絶対的な真実がないということを思い出させてくれるだろう。
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広告・宣伝効果の理論的側面を実例に則して解説した名著。 ついつい衝動買いしてしまう人、他人の意見に合わせてしまう人は必読。
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