日本の現代アート の商品レビュー
磯崎新、川俣正、勅使河原宏、松澤宥、田原桂一らのアート作品の考察を通して、「日本」というテーマをこれまでとは異なるしかたで論じる可能性を切り開こうとする試みです。なお巻末には、W・ヴェルシュが日本文化について論じた「開かれたものと閉じられたもの 日本の印象」が収録されています。 ...
磯崎新、川俣正、勅使河原宏、松澤宥、田原桂一らのアート作品の考察を通して、「日本」というテーマをこれまでとは異なるしかたで論じる可能性を切り開こうとする試みです。なお巻末には、W・ヴェルシュが日本文化について論じた「開かれたものと閉じられたもの 日本の印象」が収録されています。 マルクス主義のような「大きな物語」が意義をうしない、ポストモダンの文化論はますますミクロな領域にのみまなざしを注ごうとしていると著者はいいます。他方で、現代美術の批評的言説を見てみると、旧来の日本文化論と、日本におけるプレモダンとポストモダンの直結を警戒するあまり口をつぐんでしまう状況が見られるように思います。 著者は、このような時代において現代日本のモダン・アートを牽引する作家たちが、「日本」というハードルをどのように乗り越えていったのかという問題を掲げ、西洋のモダン・アートおよびポストモダン・アートと日本の伝統との「間」が彼らの作品のなかでダイナミックな役割を演じていることを明らかにしようとしています。 著者の問題意識には個人的に非常に共感をおぼえるところがあり、期待をもって読みはじめました。ただ、著者がめざそうとしている方向性はある程度理解できるのですが、具体的にどのようなしかたで「日本」という問題をあつかうあたらしい道筋が示されているのか、あまり明瞭に理解することができませんでした。
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