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ゼノ死ぬひまない の商品レビュー

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2017/08/20

一神教に馴染めない。信仰心はさっぱりない。祈るとしたら 八百万の神。それでも「ゼノ神父」の名前だけは知っていた。 以前、戦災孤児の話を読んでいた時に頻繁に出て来た名前 だった。どんな人なのか。気になりながら今まで来た。 生まれたのはポーランド。第一次世界大戦が始まるまで、 生...

一神教に馴染めない。信仰心はさっぱりない。祈るとしたら 八百万の神。それでも「ゼノ神父」の名前だけは知っていた。 以前、戦災孤児の話を読んでいた時に頻繁に出て来た名前 だった。どんな人なのか。気になりながら今まで来た。 生まれたのはポーランド。第一次世界大戦が始まるまで、 生家は豪農の部類に属する階級だった。だが、戦争がすべて を変えた。 鉄工所、製靴業等、職を転々としながら、ある日突然、神父に なることを目指す。そこで運命の出会いがあった。 アウシュビッツで身代わりとなり亡くなったコルベ神父の下 に身を寄せることになる。 そして、昭和5年。宣教の為にコルベ神父らと共に長崎に来日。 コルベ神父帰国後も日本に残り、長崎への原爆投下で被爆。 戦時下、外国人であることを理由に収容されもしたが、その後は 長崎のみならず、日本各地へ足を運び貧者の救済に全力であたった。 服も、靴も、かばんもぼろぼろ。でも、白く長い顎鬚を蓄えた ゼノ神父の全身には情熱が溢れていた。 口がさない人たちからは売名行為だとも誹られもしたが、何を 言われようとゼノ神父を突き動かしたのは「目の前の困っている 人を救いたい」との思いだったろう。 都合が悪くなると日本語が分からなくなったり、時には場当たり 的な行動もあったりするが、愛すべき人物だ。 「ゼノいそがし、死にひまない」。宗教を問わず、被曝者を、 戦災孤児を、身寄りのない高齢者を救い続けたゼノ神父。 異国で、たどたどしい日本語と無償の愛を武器に生き抜いた人は 再び故郷の土を踏むことなく昭和57年4月24日、天に召された。 「聖母の騎士」は召された天で、ゆっくりと休めているのだろうか。 それとも、コルベ神父と再会してまた忙しくしているのだろうか。

Posted byブクログ