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咸臨丸 海を渡る の商品レビュー

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2022/06/09

勝海舟と福沢諭吉、各々の人となり、その実際の関係について常々興味がありこの本が目にとまった。読んでいて現実にあの時代、咸臨丸でサンフランシスコに行ってきたような気持ちにさせられ、読後ほっとしたと同時にひどく疲れた。 日本人初の太平洋横断という歴史的大事業を軍艦奉行の従者長尾幸作の...

勝海舟と福沢諭吉、各々の人となり、その実際の関係について常々興味がありこの本が目にとまった。読んでいて現実にあの時代、咸臨丸でサンフランシスコに行ってきたような気持ちにさせられ、読後ほっとしたと同時にひどく疲れた。 日本人初の太平洋横断という歴史的大事業を軍艦奉行の従者長尾幸作の日記「鴻目櫆耳」を底本に曾孫の土屋良三が書いたものである。 関連する多くの文献や記録を丁寧に突き合わせ、それぞれの視点を踏まえて事実を解明していく高度な歴史文書である。 「別船仕立」を実現する江戸幕末期の高級官僚、岩瀬忠震、水野忠徳、永井尚志そして井上清直等の存在、明治期の海軍はここから始まったことがよくわかる。 軍艦奉行の木村摂津守、3500両もの身銭を切っての奮闘と士官の待遇改善への取り組み、アメリカに対しては日本人の矜持をいかんなく発揮、爾後「ニ君に仕えず」と身を引く潔さ、武士の生き様の凄さを体現。 勝と福沢に対してはそれぞれをよく理解し等距離を保つ。 ジョン万次郎の有能さと一連の事業のあらゆる事への具体的貢献、成功のキーマンでもある。 往路、ブルックとアメリカ人10人の水夫無かりせばこの事業ならず、彼の人間性に負うところが大であった。 航海時の艦長勝の存在の不透明さ、それでも乗組員は慕う不思議さ、これが度量か。 勝の幕末期海軍政略の頂点を極めた政治家と、福沢の教育者で経済人そして言論人と、性向の異なる両者が共に状況に正対し「恩義に対して厚く、友に対して深く」誠実に生きて、この動乱期の日本にあって決定的な大業を成す偉人であったたことはよくわかる。二人のその後のことも詳しく書いてある。 全体として読後、一抹の寂寥感に襲われるのは滅び去る側の物語である故だろうか。

Posted byブクログ

2017/01/21
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※このレビューにはネタバレを含みます

1998年(底本1992年)刊。日米修好通商条約の批准のため、日本人船員で構成する船舶で、太平洋を初横断した咸臨丸。これに参加した長尾幸作の子孫が、彼や咸臨丸乗員の日記等を渉猟し、航海準備期から実施、米国での歓待を叙述。また、長尾氏ほか咸臨丸乗船メンバー(中浜万次郎、木村摂津守喜毅、勝や福沢ら)の人物評伝も。苦難に向かう心意気というより、人を得たことがこの航海を成功に導いたことが伝わる。特に、木村、米人ブルック大尉、万次郎。さらに、航海実施への折衝、準備作業にあたった岩瀬忠震ら幕府開明派、勝海舟も同様。 暖かく、またユーモラスなエピソードも満載で、苦難続きだったのに、どことなくクスクスしてしまうところがあるのがいい感じだ。

Posted byブクログ