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奇跡のホルン の商品レビュー

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2019/06/21

20世紀前半に活躍した天才ホルン奏者の生涯。 いいオケはホルンが上手い・・・というのがまことしやかな定説になっていますが、ま、言い得てると思いますな。 本書は、祖父、父・伯父が揃ってホルンの名手という家系に生まれ、空前絶後の表現力とテクニックを合わせ持った天才ホルン奏者、デニ...

20世紀前半に活躍した天才ホルン奏者の生涯。 いいオケはホルンが上手い・・・というのがまことしやかな定説になっていますが、ま、言い得てると思いますな。 本書は、祖父、父・伯父が揃ってホルンの名手という家系に生まれ、空前絶後の表現力とテクニックを合わせ持った天才ホルン奏者、デニス・ブレインの生涯を綴ったものです。銀の匙ならぬ、銀のマウスピースを咥えて生まれて来たと。 サブタイトル(「デニス・ブレインと英国楽壇」)にもあるように、時代はちょうどイギリス楽壇の興隆期。ロンドン・シンフォニー、BBC交響楽団、フィルハーモニアといった世界的オーケストラの誕生や、バルビローリやカラヤンを始め同時代の名音楽家たちの活躍と相交じり合いながら、時にオーケストラのトップとして、時にソロとして、また室内楽で、世間の耳目を驚嘆させながら八面六臂の大活劇を演じるさまが小気味よく描かれ、一気に読まさりました。 デニス・ブレインの演奏は今やYouTubeなどで見る・聴くことができますが、確かに音質は豊かで明晰、タッチは柔らかく確信に満ち、曲想はおおらかで・・・と本当に褒め言葉しか出て来ません。こうしたプレイヤーの存在が並み居る作曲家たちの創造力を刺激したことも含め、ホルン自体の可能性を飛躍的に拡大させたというほどの大物なんですね。 巻末にその「天才たるゆえん」がまとめられていますが、家族からうけついだ歯並び、強靱な顎や心肺や精神力、曲解釈や合奏においての天性の勘などなど、まさに天才しか天才になれないのだということですね。一体、もう少し努力なり苦労なりという側面はなかったもんなんでしょうか(笑)。 さて惜しむらくは、デニス君は1957年、自らハンドルを握る自動車の事故により、36歳の若さで突然世を去っています。当時の音楽界が受けた衝撃は想像するに余りありますが、これも天才の宿命のひとつなのかも知れません。

Posted byブクログ