野ざらし紀行評釈 の商品レビュー
松尾芭蕉 紀行文集 岩波文庫 版は 原文なので、俳句どころか、旅の土地が変わったことすら 気付けない。口語訳くらい付けて欲しい 角川書店 尾形仂 野ざらし紀行 評釈のおかげで 内容だけでなく「奥の細道」との関係性や芭風の特性まで 理解できたと思う。「奥の細道」の...
松尾芭蕉 紀行文集 岩波文庫 版は 原文なので、俳句どころか、旅の土地が変わったことすら 気付けない。口語訳くらい付けて欲しい 角川書店 尾形仂 野ざらし紀行 評釈のおかげで 内容だけでなく「奥の細道」との関係性や芭風の特性まで 理解できたと思う。「奥の細道」の終わりが 大垣なのは、芭風の即興性(軽み?)が 「野ざらし紀行」の大垣から始まったからでは? 歌枕巡礼の盛り上がりは吉野であるが、俳句の即興性や自由さ(風狂)は その先の大垣の方に強く感じる。漢詩の重さがなくなったような感じ 〈旅立ち、箱根越え〉 「野ざらしを心に風のしむ身哉」 捨て身の覚悟 〈富士川〉 「猿を聞人 捨子に 秋の風いかに」 *捨て子の泣声を聞いて哀猿の叫びをイメージ *人間の力ではどうにもならない天命と無力の自覚 〈大井川、佐夜の中山〉 「馬に寝て残夢月遠し茶のけぶり」 夢心地のなか視線に飛び込む残月と茶の煙〜これぞ日本の風土の旅情 〈伊勢〉 「みそか月なし千歳の杉を抱く嵐」 *古人が崇敬の情を寄せた月は見えない *抱く嵐=森厳の嵐気が千古の神杉を包みこんでいること〜西行はこの嵐気に 木の葉隠れの神路山の月におぼえたと同じ崇敬の念を感得した 「蔦植えて竹四五本の嵐かな」 *蔦が紅葉し、そこに竹が四五本、その上を渡る秋風が 中国の高士を思わせる閑雅な風懐をしのばせる *竹=中国の高士、隠者を描く場合の題材 〈伊賀、大和〉 「像朝顔幾死に返る法の松」 *仏縁により長寿を保つ松が巨木になる間、その傍らの朝顔は幾代死に返って今日に至ったことか *老松の「無用の用」を賛するのでなく、巨木に刻まれた法灯の年輪を賛する 荘子のパロディ 〈吉野〉 *漢詩文を通して知った詩境を日本の風土の上に確かめようとする芭蕉の姿勢 *吉野に逃れて詩歌の世界に入った古人たちの詩情 *吉野=峰の白雲という伝統的パターン *吉野を「唐土の廬山」と見立て 〈山中、不破、大垣〉 「秋風や藪も畠も不破の関」 *秋風懐古〜秋風の悲愁に懐古の情を配したパターン *不破=荒廃、凋落 *意識の深層から古人への鎮魂の歌を響かせる音楽性の獲得 *音楽性の獲得は「野ざらし」の句以来、張りつめていた緊張が到達点に達して、気持ちの余裕として生まれる 「死にもせぬ旅寝の果てよ秋の暮」 *あんな大げさなこと言って旅立ったのに、死にもせず無事木因のもとにたどり着いた〜秋の旅もこれで終わり *安堵と自嘲 *旅寝の果て=大垣で紀行の第一部終了→「野ざらし」を超えた新しい旅の風狂の思い 〈桑名、熱田〉 「曙や白魚白きこと一寸」 〈尾張旅泊〉 「狂句こがらしの身は竹齋に似たる哉」 *「冬の日」は芭風開眼第一の選集 *「竹齋」は藪医者の竹齋が諸国流浪する物語 *狂句=滑稽、通俗、自由な俳諧の句 *自分は狂句をよむという宣言 *木枯が作者の姿であり、句全体の色調でもある 〈故郷越年、大和〉 「年暮れぬ笠着て草鞋(わらじ)はきながら」 *世間の人は静かに元旦を待つのに、私は旅装のまま旅笠をつけ、草鞋をはいた *風狂の世界に耽溺する喜び
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