正体見たり社会主義 の商品レビュー
本書は、共産主義・マルクス主義の思想を鋭く批判している本です。ただし、マルクス主義の理論を論駁することよりも、マルクスやその追随者たちの心理を解き明かすことに、著者の考察は向けられています。「彼等のまきちらす議論を馬鹿正直に聞くのではなく、実際に彼等がやったことに注目したい。本書...
本書は、共産主義・マルクス主義の思想を鋭く批判している本です。ただし、マルクス主義の理論を論駁することよりも、マルクスやその追随者たちの心理を解き明かすことに、著者の考察は向けられています。「彼等のまきちらす議論を馬鹿正直に聞くのではなく、実際に彼等がやったことに注目したい。本書のテーマは、社会主義共産主義の実態、である。彼らの手口の暴露である」と述べられている通りです。 それなりにおもしろく読めたところもあったのですが、「実証主義」対「認識理論」という枠組みから、マルクス主義の心理を説明した最終章の議論はどうにも乱暴に感じました。そもそも「認識理論」という聞きなれない概念に躓いてしまうのですが、どうやら経験科学的な認識を超えて、理性の洞見によってこの世界の真理を解き明かすことができるという立場を意味しているようです。 そのうえで著者は、そうした「認識理論」は観念の遊戯のようなものにすぎず、そうした考えに共感を抱くのは、経験科学的な認識を超えた真理があってほしいというロマン主義的な心性にほかならない、しかし、それには何の根拠もないと考えているように思えます。 「解説」で鷲田小彌太が、林達夫と著者を比較して、「林にあって谷沢にないもの」は「ルネッサンスを中心とする西欧文化思想史研究」だと述べていますが、なるほどと納得しました。
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