習慣と創造 の商品レビュー
サブタイトルに挙げられているベラスケス、プッサン、セザンヌの三人の画家たちを中心に、西洋美術史の一つの水脈をたどった本です。 著者はまず、パノフスキーの『〈象徴形式〉としての遠近法』を参照しながら、ルネサンスにおける遠近法の成立と、その精神史的な意味を概観します。そのうえで、射...
サブタイトルに挙げられているベラスケス、プッサン、セザンヌの三人の画家たちを中心に、西洋美術史の一つの水脈をたどった本です。 著者はまず、パノフスキーの『〈象徴形式〉としての遠近法』を参照しながら、ルネサンスにおける遠近法の成立と、その精神史的な意味を概観します。そのうえで、射影幾何学の出発点となったデザルグの定理をとりあげ、それが遠近法によって象徴される近代的な思考空間に代わるような、西洋精神史の新たな時代を切り開く意味を見いだすことができるという観点を示します。 こうした観点から、著者はプッサンやセザンヌの作品の解釈をおこないます。プッサンにかんしては、その時間表現に注目することで、レオナルド・ダ・ヴィンチによる「模倣としての創造」に対置されるような、「破壊と一体になった創造」というモティーフが認められるとともに、近代以降の西洋思想史に大きな影響をおよぼしたピュロニズムとのつながりを見いだしています。またセザンヌにかんしては、『籠のある静物』や『サント・ヴィクトワール山』に見られる多視点の併存にデザルグ的な発想を認め、さらにそうしたモティーフがピカソのキュビズムに受け継がれていったことが論じられています。 またベラスケスにかんしては、フーコーの分析で有名な『ラス・メニナス』とともに『織女たち』についても分析をおこない、そこに認められる視点の反射の働きのうちに反省ないし熟慮というモティーフが読み取られています。
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