赤穂浪士(上) の商品レビュー
上巻696ページ、下巻707ページ、合計1403ページ。こんな長編、久々に読みました。でもこれだけ長いのに、長さをちっとも感じさせません。一日に読める量が限られてしまうため約一ヶ月かかりましたが、おもしろくておもしろくて途中で投げ出すことなんてできませんでした。 この本は、新潮...
上巻696ページ、下巻707ページ、合計1403ページ。こんな長編、久々に読みました。でもこれだけ長いのに、長さをちっとも感じさせません。一日に読める量が限られてしまうため約一ヶ月かかりましたが、おもしろくておもしろくて途中で投げ出すことなんてできませんでした。 この本は、新潮文庫が「人生で二度読む本」ということで昨年8月から出している復刊シリーズの中の一作で、昨年の11月末に出たもの。昭和39(1964)年以来の復刊です。 日本人なら知らない人はいない赤穂浪士(または忠臣蔵)のお話だから、今さらそんなのわざわざ読むのもタルいよ(長いし)、とお思いの方、この大佛作品はちょっと違います。解説の言葉を借りてしまうと、<非業の最期を遂げた幕吏を父に持つニヒリスト堀田隼人や怪盗蜘蛛の陣十郎といった傍観者的立場に立つ人物>が大活躍しちゃうんです。これがめちゃめちゃおもしろいんですよ。 堀田隼人の気持ちはこうです。<赤穂浪士といい、またこの千坂兵部といい、簡単に自分の命をなげうってまで護ろうとしているこの主家とは一体何だろう? 一人の主人の癇癪の発作によって幾千人の者が路頭に迷う。また一人の強欲な老人の、いつ死んでも惜しくない命を護るために幾十人かの若者の血が流されようとする。この当然のこととして世の中に行われていることに、隼人は疑問の目を向けないわけには行かないのだった> どうですか。これは現代に生きるわたしたちの、「忠臣蔵」に対する率直な気持ちそのものではないですか。読者の視点に一番近いと思われるのが堀田隼人という人物であり、この小説には欠かせない活躍を見せてくれる。おかげで、読んでいると、自分がまさに今その時代、そこにいて、これらの出来事を目の当たりにしているかのように身近に感じられるのです。そしてこの疑問に対する答えは、ちゃんと小説の中にあるのです。 この本は、発売された昭和39年の、同タイトルのNHK大河ドラマの原作でした。2本目の大河ドラマだったそうです。わたしの印象に深く残っている赤穂浪士のドラマは、同じくNHK大河ドラマの「峠の群像」で、これを読んでいる間、大石内蔵助はずっと緒方拳さんでした。小説そのものも、「峠の群像」のイメージと違和感がなかったので、もしかしてこれが原作だったのかと思ったくらいでした(「峠の群像」の原作は堺屋太一)。 これ以外に忠臣蔵小説は読んでいませんが、歴史的事実に絡むフィクションが本当におもしろかったので、本書をお勧めしておきます。忠臣蔵はテレビドラマでしか知らなかったんですが、今回ちゃんと読んでみて改めて感動しました。読んでよかったです。今後、他の作家の描く「忠臣蔵」も読んでみたいと思っています。 読了日:2008年1月12日(金)
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