覇権後の国際政治経済学 の商品レビュー
貿易を通じて、国家が国境を横断して利益を共有すれば、戦争によって利益を失うコストが大きくなるため、互いに戦争を回避する。ラルフ・エンジェルAngell『大いなる幻影』1912 ※英・労働党の議員。 経済や社会など機能的な分野での協力が、政治分野での協力にもつながる(あふれ出る=...
貿易を通じて、国家が国境を横断して利益を共有すれば、戦争によって利益を失うコストが大きくなるため、互いに戦争を回避する。ラルフ・エンジェルAngell『大いなる幻影』1912 ※英・労働党の議員。 経済や社会など機能的な分野での協力が、政治分野での協力にもつながる(あふれ出る=spill-over)。ハースHaas1964 経済や社会など機能的な分野での協力を積み重ねることが、異なる国の国民を結びつけ平和構築につながる。ミトラニーMitrany1966 両国が互いに等しく経済的に依存し、その依存度が高い場合、その関係を変化させるコストが大きいため、協調関係を維持しようとする。▼経済依存度が非対称な場合、依存する側は相手の要求に屈する場面が出てくる。国際関係は軍事力だけでなく、経済依存関係もパワーの源泉になる。コヘイン&ナイKeohane & Nye 1977 200年以上にわたり、民主主義国家同士は戦争をしていない。マイケル・ドイルDoyle1983 国家は自国の国益の増大を目指す合理的な主体。なので経済的な相互依存が高まり、通商による利益が増大するにつれて、領土拡大による利益は下がっていき、軍事力の行使は抑制される。ローズクランス1986 経済の相互依存(GNPに占める貿易の割合)が高くなると、軍事的な紛争の可能性は低くなる。ラセットRussett 1980s 国の力を測る指標として、軍事力や経済力だけでなく、文化や価値の魅力によって相手を動かし、自分たちに望ましい結果を手に入れる力(ソフトパワー)が大切。他者の選好を形成する力。ソフトパワーの要素になるのは、文化(文学・言語・映画・音楽・宗教・サブカル)、政治的な価値観(デモクラシー・自由)、外交政策(正当で敬意を払われる政策)。ジョセフ・ナイNye『ソフト・パワー』2004
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国際レジームはシステム研究の価値があるだけでなく、実際にそのような研究を多いに必要としている。しかしシステム分析は完璧ではない。 覇権概念の利点は覇権国のパートナーが覇権国のリーダーシップに従う意思を理解するのを助けるという点にある。覇権国は世界資本主義秩序を構築するために覇権国...
国際レジームはシステム研究の価値があるだけでなく、実際にそのような研究を多いに必要としている。しかしシステム分析は完璧ではない。 覇権概念の利点は覇権国のパートナーが覇権国のリーダーシップに従う意思を理解するのを助けるという点にある。覇権国は世界資本主義秩序を構築するために覇権国への服従を必要とする。 覇権は協調や国際レジームのような制度と複雑に関係している。 レジームのルールは規範と区別するのは難しい。国際レジームの概念は複合的。原則、規範、ルール、意思決定手続きはすべtえ行動についての規定を含んでいる。
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1980年代アメリカの国際政治学において、本著作は最重要文献の一に入れられるような一冊である。しかしその一方で、日本においての受容がどうであったかと考えると、それは疑わしい。その結果、なのか、それともそもそもとして国際政治学の不人気さ故なのか知らないが、現在では入手が困難な状況...
1980年代アメリカの国際政治学において、本著作は最重要文献の一に入れられるような一冊である。しかしその一方で、日本においての受容がどうであったかと考えると、それは疑わしい。その結果、なのか、それともそもそもとして国際政治学の不人気さ故なのか知らないが、現在では入手が困難な状況にあり、少なくともAmazonでさえカバー画像が出ないということは間違いない。それにはいくつかの要因があると思うのでそれを書く。 まず、本著は1998年に初めての翻訳をされており、邦題は『覇権後の国際政治経済学』となっている。原題の"After Hegemony"(1984年)よりもタイトルとしてはカッコ悪く、けれども中身に近くてよろしいと思うのだが、それでも少し日本においては著作に関する解釈がタイトルに寄り過ぎている気がする。ちゃんとした学者さまはそういうこともないのだろうけど、一般的な認識としては、よろしくない現状にあるように感じる(あくまで印象ね)。つまり、アメリカ様覇権衰退後とレジーム存続に関する本だと読む人がとても多い。それは一側面として正しいのだが、それではあまりに偏狭に過ぎよう。 しかし、そういう解釈になってしまうのにはこれまた原因があって、そこには日本でケネス・ウォルツが嫌われ、翻訳されてこなかったという事情があると思う。本著は1979年のウォルツ著『国際政治の理論』を踏まえた上で、リベラリストから反論をしたというものになっているのに、そもそもウォルツ自体が殆どまともに受容されなかった。そしてそれより先にコヘインの本著が翻訳されてしまったのだから、本著の解釈において偏りが生じてしまった。 内容としては、アナーキーだからうまくいかないなんてことはない、それでもレジームに基づいて、繰り返しゲームとか、コースの定理とか、限定合理性という観点から、うまくやれるよ、って話だった気がする(うろ覚え)。 ちなみにこの後、ネオネオ論争という、ネオリアリスト(ウォルツ)とネオリベラリスト(コヘイン)の間の論争があったらしい。だからみんな、コヘインを読む前にちゃんとウォルツ読もうぜ。これに尽きる。それかこの議論にいっさい乗っからないか。80年代の日本の学者はそういうスタンスだったし、それはそれでいいと思う。その代わりアメリカ様が認めてくれたぜとばかりにコンストに飛びつくのもダサいから止めよう。
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「国家間協力」というテーマを新制度学派の切り口から検討したもの。 コヘインは「アメリカというヘゲモンの消失後に国家間協力は可能か?」というテーマを設定し、「個々の国家に協力へのインセンティブがあるならば、可能だ」と応じる。そして「個々の国家が協力へのインセンティブがある状況」の...
「国家間協力」というテーマを新制度学派の切り口から検討したもの。 コヘインは「アメリカというヘゲモンの消失後に国家間協力は可能か?」というテーマを設定し、「個々の国家に協力へのインセンティブがあるならば、可能だ」と応じる。そして「個々の国家が協力へのインセンティブがある状況」の創出において、アメリカというヘゲモンは必要条件ではなく、国家間制度によってそのような状況を作り出せると主張する。 本書はよくも悪くも粗い議論を展開しており、ゲーム論や新制度学派の基本的なフレームワークと併読することをお勧めします。 参考までに菊澤研宗「組織の経済学入門」は新制度学派の入門書として良書です。またゲーム論を使った新制度学派の議論としてGrief "Institution and the path to the modern economy"なんかは面白いですよ。
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つまるところ、アメリカの絶対的な覇権が終わりを告げても、その覇権がもたらした戦後秩序は制度として残り、機能する、ということ。その制度・秩序は情報の非対称性や、信頼醸成機能、複合的相互依存などをもたらし、安定をもたらす。 ウォルツに始まったネオリアリズム論争に対する、リベラリズムの...
つまるところ、アメリカの絶対的な覇権が終わりを告げても、その覇権がもたらした戦後秩序は制度として残り、機能する、ということ。その制度・秩序は情報の非対称性や、信頼醸成機能、複合的相互依存などをもたらし、安定をもたらす。 ウォルツに始まったネオリアリズム論争に対する、リベラリズムの反抗。二つの潮流を絶妙に使い分けているので、悪くはないと思います。
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