「日本人」の境界 の商品レビュー
いまでは沖縄県は日本であり、それを当然視してしまうが、 琉球処分以降の包摂があってのこと、 そしてアンビバレントな感情があること、 丹念に解きほぐしてくれていて、大変勉強になった。 これを読むと、旧植民地に対して、統治時代に投資してあげた、 なんてとても言えないのではないか。 ...
いまでは沖縄県は日本であり、それを当然視してしまうが、 琉球処分以降の包摂があってのこと、 そしてアンビバレントな感情があること、 丹念に解きほぐしてくれていて、大変勉強になった。 これを読むと、旧植民地に対して、統治時代に投資してあげた、 なんてとても言えないのではないか。 それは感覚的な主張にすぎない。
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〇琉球処分 琉球の処遇について、明治政府の方針は一枚岩ではなかった。 一方では、江戸時代以来の支配方式の維持が唱えられた。その根拠として、直接支配(日本の領土に編入)方式ととった場合のコストの大きさや琉球の人々と「日本人」との間に大きな差異があるとの主張がなされた。あくまで「...
〇琉球処分 琉球の処遇について、明治政府の方針は一枚岩ではなかった。 一方では、江戸時代以来の支配方式の維持が唱えられた。その根拠として、直接支配(日本の領土に編入)方式ととった場合のコストの大きさや琉球の人々と「日本人」との間に大きな差異があるとの主張がなされた。あくまで「琉球人」による政府を存続させて、イギリスによるインド統治のように間接統治をとり、外交権などを日本が掌握して内政は現地人に任せるべきで、琉球を日本とはしない。 もう一方の琉球論として、日本の領土に編入し、中央政府による直接支配を行う方針が打ち出された。琉球はアジアにおける交通・軍事の要衝であり、欧米諸国によって植民地化されれば、日本の安全保障にとって脅威となる。琉球防衛のためには、日本政府が直接統治する必要がある。 結果的に、後者のルートが選ばれたことは言わずもがな。 〇沖縄での「日本人」化教育 琉球人を国家に忠実な日本人にするため、「日本人」化教育が言語・文化などの面で推し進められた。これは、土地制度などについては旧慣を温存して琉球を利益基盤としていた士族層の離反を避けるなど、制度上の改革は後回しにする形で行われた。 旧慣温存と「日本人」化教育の併存については、統治上のプラグマティズムの面から唱えられることもあったが、山県有朋などは国防上の目的からその併存を主張した。 琉球での「日本人」化政策を進めるため、琉球の歴史は改変され、源為朝伝説などを用いて琉球人と日本人の民族的同一性が広く唱えられ、同時に進められる文明化政策の影響も受けて、徐々に琉球人=沖縄県民にも「日本人」としての意識が浸透していった。 琉球での「日本人」化教育の成功は、のちの台湾や朝鮮における植民地統治の原型となった。
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江戸後記から明治以降の日本が,どのような「日本」として歩もうとしていたのか,その日本のあり方に関して,とても詳細に解説してくれています。 北海道や沖縄が日本であることは自明なのか。自明だとすればいつからか。それはどのように,そうなったのか。朝鮮や台湾が併合されたり占領されたり...
江戸後記から明治以降の日本が,どのような「日本」として歩もうとしていたのか,その日本のあり方に関して,とても詳細に解説してくれています。 北海道や沖縄が日本であることは自明なのか。自明だとすればいつからか。それはどのように,そうなったのか。朝鮮や台湾が併合されたり占領されたりしたときに,どのように「日本」化しようとしたのか,あるいはしなかったのか。日本の植民地政策というのはいかなるものだったのか。 西洋に追い付き,不平等条約の改正を求めて,富国強兵で進んできた日本。まわりの領土を獲得していくのだが,ここで問題が出てくる。「わたしたちは,西洋人がアジアでやってきたこととは違うことをするのだ」「日本人は同じアジア人として,同胞としてやっていくのだ。しかし,まだ,土人たちは未開人なので…」という姿勢で支配を強めようとするのだが…。
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沖縄、北海道、台湾、朝鮮の統治の状況を言説から分析した本。北海道と沖縄の併合からわずか10年後に台湾統治が、そしてそのすぐあとに朝鮮併合があり、当時の日本にとっては沖縄と北海道併合の延長線上に台湾、朝鮮併合を捉えていたことがわかる。その結果、台湾、朝鮮併合の正当性について大きく悩...
沖縄、北海道、台湾、朝鮮の統治の状況を言説から分析した本。北海道と沖縄の併合からわずか10年後に台湾統治が、そしてそのすぐあとに朝鮮併合があり、当時の日本にとっては沖縄と北海道併合の延長線上に台湾、朝鮮併合を捉えていたことがわかる。その結果、台湾、朝鮮併合の正当性について大きく悩むことはなく、一方で沖縄、北海道であったことと同様、大和民族とそれ以外のエリアの民族との間で権利として平等運用は行わなかったことが描かれている。対外的には主権国家として同一民族(出自は同じ。もしくはアジア人論を創造)を主張しつつ、民主主義としては二級民族認定し、戸籍の別途運用、選挙権非付与を貫いた。差別については、「民度」が低いという文明的発想と、ナショナリズムが混在している。台湾、朝鮮統治においては、総督府が内閣ではなく、天皇に直結した組織だったことが、のちの陸軍の暴走につながったと、法制面の分析から、太平洋戦争の政治的背景を推測する上でも役に立つ。
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※このレビューにはネタバレを含みます
若いながらなかなか素晴らしい著者です。著者の博士論文が出版されたものです。日本人であって日本人でない人たち。戦前の朝鮮・台湾人がそうでした。日本帝国の勝手な理屈により、都合が良い場面では「日本人」とされながら参政権が与えられなかった人たちと、逆に日本に同化しようと努力し、完全に日本人になった琉球人(沖縄人)との差を生んだ理由は?戦前の在日朝鮮人が選挙権を獲得するに至った歴史、また在日唯一の衆議院議員になった人物のアンビバレントな悩みを書いた章も複雑な気持ちにさせられます。彼は完全な日本人になろうとして逆に不幸な最後を迎えます。沖縄復帰を巡る沖縄県民の複雑な心理の動き(薩摩藩による琉球処分以来の日本帰属は短期間であり、しかも20世紀までは通常の参政権もなかったのにも関わらず、また戦中の沖縄戦の悲惨な経験もありながらなぜ日本に復帰したいという運動があれほどまでに盛り上がったのか)にも詳しく、ちょうど沖縄戦役終了60周年の記念日(6/23)に相応しい読書になりました。これまた790㌻の長大論文で読むのに1週間を要してしまいすっかり疲れましたが、靖国問題が焦眉の急を告げていることもあり、そういう観点からも大変興味深く読むことができます。アイヌ問題は沖縄と異なり、完全に日本に取り込まれてしまった歴史ということもあり残念ながら詳しくありません。
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『「日本人」とはどこまでの範囲を人々を指す言葉であったのか。』,『その「日本人」の境界はどのような要因によって設定されてきたのか」』ということが本書の主題であり,近代日本の境界領域にあたる沖縄,アイヌ,台湾,朝鮮などに関する政策論を検証することにより,「日本人」のナショナル・アイ...
『「日本人」とはどこまでの範囲を人々を指す言葉であったのか。』,『その「日本人」の境界はどのような要因によって設定されてきたのか」』ということが本書の主題であり,近代日本の境界領域にあたる沖縄,アイヌ,台湾,朝鮮などに関する政策論を検証することにより,「日本人」のナショナル・アイデンティティの問題を考察したものである。
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