夢 の商品レビュー
本作も随所に編者の妙を感じる…。 佐川ちかの「童話風な」で、読者は”現実と夢の境目を見失う。 幻惑と脅威の夢を渡り歩く中、多田智満子の「初夢」にかすかに穏やかなまどろみを覚えて小休止。金色のみかんの中に入ったことが、きっと誰しもあるはず。 須永朝彦訳の『摂津国風土記』より「夢...
本作も随所に編者の妙を感じる…。 佐川ちかの「童話風な」で、読者は”現実と夢の境目を見失う。 幻惑と脅威の夢を渡り歩く中、多田智満子の「初夢」にかすかに穏やかなまどろみを覚えて小休止。金色のみかんの中に入ったことが、きっと誰しもあるはず。 須永朝彦訳の『摂津国風土記』より「夢野」は、妾の女鹿を慕い海を渡る牡鹿による町名の由来話。こういう逸文が読めるのが、アンソロジーの面白い部分だな…と実感。 同じく須永氏訳の『兎園小説』より「夢の朝顔」もとても好きな雰囲気だった…。夭折の娘と朝顔…おかかさま、花が咲きました…。 『捜神記』より「蟻の穴の夢」も、短文ながら非常に幻想的でとても好みだった…やっぱり中国文学はいいね…。”審雨堂”という語の美しさよ…。 人の見る夢を通り過ぎ、辿りついたのは半神半人の王の見る夢であった。まさかギルガメシュ叙事詩まで収録してくるとは…東雅夫氏の他分野に及ぶ本棚の広さよ…。 『ギルガメシュ叙事詩』より「ギルガメシュとエンキドゥの夢」しかもこの部分を収録するとは…。これがかの有名な…フンババ退治にイシュタルの求婚…不老不死を求める旅…。あまりにも長く短い夢のような、唯一の友と過ごした王の時間。幸せな思い出が悲劇であるほどに、夢は醒めないのだ。 澁澤龍彦「夢ちがえ」、最近めっちゃ澁澤龍彦よみたかったから嬉しかった…。めっちゃ好みだった…。耳しいた姫が恋焦がれた若武者…恋敵を討とうと暗躍する女と、その女を寵愛する姫の異母弟…。もうこれだけでたまらない…。黒いおとぎ話…呪術…舞踊…天狗…生首…ドラコニア・ロマネスク…最高だ…。
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宮部みゆき「たった一人」、筒井康隆「夢の検閲官」、ボルヘス「円環の廃墟」、カフカ「夢」など、夢の文学に照準を絞り、古今東西より拾い集めた30篇を収録
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宮部みゆき「たった一人」が素晴らしかった。他に澁澤龍彦、筒井康隆、ダンセイニなど秀逸。やはりこのシリーズは面白い。
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「書物の王国」は、一冊ごとに「架空の町」「吸血鬼」などユニークなテーマを設けて集められた短編小説集のシリーズ。 "書物の"と守備範囲の広そうなタイトルではあるものの、実態はほぼ幻想小説のオンパレード。 何故か第二巻から挑戦してしまった。この巻のお題は「夢」。 シュールな話が多いのでファンタジーぽさを求めて読むとしばし唖然とします。しかし古代の詩から現代幻想小説まで色々とりそろえてあって最終的には面白かったです。特にボルヘスを知ることができたのは大した収穫でした。編者に感謝。 でもテーマ的にはどんぴしゃな気がする「夢十夜」(夏目漱石)がまるでスルーされているのは何故だろう… (2006年 6月)
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