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前略、押井守様。 の商品レビュー

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2023/02/14
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 トリさんの経験則としては、何かを成そうとしてやる演出は失敗しやすい。笑わそうとか泣かそうとか、盛り上げようとか、そういう演出はスキだらけになる。ちょっとしたスキで崩壊して、みっともないことになっちゃうんです。 ――P.260 問題なのは、2023年にもなって1998年刊行のこのような書籍を読もうと思うと、手段が限られることだ。図書館か古書か伝手か。電書などない。 近年、思い出したように押井守の発言や評伝をひろいあつめるようになり、そのなかで本書の影がちらちらと見えて気になりはしたものの、地元図書館には蔵書がなく、古書の出待ちをするしかなかった。 テーマとなっていることについて一家言あるような思い込みを持っていると、読書時の妨げとなりやすい。熱心ではないがしつこくフォローしてる程度のファンでも、本文中の言葉尻にいちいち激することもあったが、これは押井を語った本、ならば色即是空。 『紅い眼鏡』のエンディング、都々目紅一のトランクに入っていたのは赤いサングラスだった――というのは、個人的に準『薔薇の名前』級の謎で、本書を読むまではなんの解釈も持てずにいた。本書には評者の一論という立場ではあるが解釈が語られており、今生の迷いを残したくないのであれば、そのためにだけでも一読の価値あり。 引用した箇所について、押井はアニメーションに限定しているが、個人的には洋画を含む映画にも当てはまると認識している。顕著にして有名な例だと『シンドラーのリスト』。公開当時には感動ポルノという言葉を知らなかったが、まさにそれ。映画に対し次第に興味を失っていったが、その端緒となったもののひとつである。

Posted byブクログ