ダイナミック英文法 の商品レビュー
認知意味論の考え方をもとに、高校で扱う範囲の前置詞、名詞、文型などの英文法を解説したもの。英文法学習の盲点や、英文法の本質を理解するのに役に立つ本。 例えば、「太陽は東から昇り、西に沈む」をきちんと英訳するには、一見簡単そうだが、それなりの英語の感覚を身につけていないと自然な...
認知意味論の考え方をもとに、高校で扱う範囲の前置詞、名詞、文型などの英文法を解説したもの。英文法学習の盲点や、英文法の本質を理解するのに役に立つ本。 例えば、「太陽は東から昇り、西に沈む」をきちんと英訳するには、一見簡単そうだが、それなりの英語の感覚を身につけていないと自然な英語に訳せないということが分かる(pp.1-3)。あるいは、play the guitarとは言っても、play guitarと実際に言ったらどういう感覚になるのか、ということを、高校の授業でおれは解説してもらった覚えがない(pp.29-33)。また、高校のとき予備校で、「英語の動詞はすべて他動詞だ」という話を聞いて納得していたが、「動詞はすべて他動詞性を持っている」(pp.41-2)という項に出会えて、個人的に嬉しく思った。さらに、This letter was written in ink.は良いが、This letter was written with a pen.は不自然、ということ(pp.146-7)も、言われなければ気付かない言語現象だと思うし、こういうことを知ることで、英文法の面白さを感じることができると思う。 サブタイトルは、「生きた英語を使いこなすコツと感覚」ということで、コーパスを利用し、実際の映画や小説の用例を豊富に紹介している。さらに帯には、「英文法は無味乾燥な規則の羅列ではない、もっと創造的な人間くさいコミュニケーションのための道具だ」と書いてあり、かなりの程度、英語の実運用面を伸ばそうと考える人たちを意識していることが分かる。しかし、この点については、中途半端に終わっている感がある。まず、用例があまりにオーセンティック過ぎて、文法の内容を理解するための用例としては分かりにくいという点がある。そして、ところどころ実用英語を重視したい人にとっては、おそらく分かりにくい、瑣末とも思えてしまう説明も多い。例えばほとんど解説もなく「7文型」が導入されており、実用英語の前に英文法をきちんと勉強したいと思う向きでないと読みにくいと思う。この本の本質的な部分というのは、「ことばは何といってもコミュニケーションの重要な道具ですが、ただの道具ではなく、私たちのこころの微妙なヒダを伝える『繊細な道具』です。本書でいう英文法とは、そういった繊細さを実際のコミュニケーションの場でうまくとらえながら、その鍵となる見えにくいルールを見つけ出して体験していく過程そのものである」(p.114)の部分ではないかと思う。むしろ英文法の繊細さ、巧みさ、そして面白さを前面に押し出す形の読み物としていた方が、もっと良かったと思う。(11/12/--)
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