ねむり姫 の商品レビュー
澁澤龍彦といえば、エッセイの数々で、古代ギリシャから中世、ルネッサンス、果ては現代文学から現代芸術全般に至るまで、まさしく博覧強記の衒学趣味。だが、ここには彼のもう一つの顔―すなわち、日本の古典をこれまた縦横無尽に駆使した、翻案幻想物語の語り手としての澁澤がいる。彼の語る物語はそ...
澁澤龍彦といえば、エッセイの数々で、古代ギリシャから中世、ルネッサンス、果ては現代文学から現代芸術全般に至るまで、まさしく博覧強記の衒学趣味。だが、ここには彼のもう一つの顔―すなわち、日本の古典をこれまた縦横無尽に駆使した、翻案幻想物語の語り手としての澁澤がいる。彼の語る物語はそのいずれもが、空間も時間も周囲からは隔絶し、ぽっかりと中空に浮かんでいるかのような独特の様式を持っている。ここに収録された6篇のいずれもが、そんなスタイルだ。澁澤の語る物語を読むのは、まさにしばし仙窟に遊ぶといった趣きなのである。
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随分昔に購入していた本です。 西洋風のおとぎ話を日本の昔話に置き換えた風ですね。そして必ずしもハッピーエンドにならない辺りがさらに面白い。幻想小説と言うのはこういう感じの取りとめの無いものなのかなあなどと思いした。面白かったです。また何か違う本も読んでみようと思います。
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短編集。この作家さんは初めて知りましたが、近現代というより現代作家さん? なのに近現代風というのがなんというか掴みきれず。 雰囲気はありましたが、自分好みかと言われるとちょっとキツかったです。
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中世日本のあやかしの短編集。 何と言っても面白かったのは表題作のねむり姫。 夢と現の間にとらわれるねむり姫とつむじ丸の想いの交差は何とも言えない
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相変わらず夢心地になる。 ただしいつにも増して読めない漢字が多いので、手元に筆順辞典(これが役に立つ!)と広辞苑を登録したEBPocketをインストールしたiPod Touch(など)を常備する必要あり。 また、この人はおそらく小説よりもエッセイなどの方が人気があると思うが、私...
相変わらず夢心地になる。 ただしいつにも増して読めない漢字が多いので、手元に筆順辞典(これが役に立つ!)と広辞苑を登録したEBPocketをインストールしたiPod Touch(など)を常備する必要あり。 また、この人はおそらく小説よりもエッセイなどの方が人気があると思うが、私はむしろ小説の方が気持ち良い。
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後白河法皇の院政の頃、ある中納言家に珠名姫とつむじ丸という腹ちがいの兄妹がいた。珠名姫はその名の通り美しく、つむじ丸は放蕩濫行が目に余る少年で、お互いに接することなく暮らしていた。物語は、珠名姫が裳着(女の子の成人式)を迎えた14歳の年に、突然の永い眠りにおちるところから始まる。...
後白河法皇の院政の頃、ある中納言家に珠名姫とつむじ丸という腹ちがいの兄妹がいた。珠名姫はその名の通り美しく、つむじ丸は放蕩濫行が目に余る少年で、お互いに接することなく暮らしていた。物語は、珠名姫が裳着(女の子の成人式)を迎えた14歳の年に、突然の永い眠りにおちるところから始まる。眠ったまま、長い年月にわたって京を漂う珠名姫と、盗賊となって数奇な人生を歩むつむじ丸は、無意識の中で引き合う運命にあった…。私の苦手な幻想的世界がみごとに計算されている物語である(ようだ)。「眠れる森の美女」や仏教思想などを下敷きにしているが、舞台を日本の中世に設定したその必然性がよく分からない。当時の仏教思想にこだわらずとも、他のものでも代用がきくのでは?という感じ。日本の中世的物語だと思って読んだ私には、何となく違和感があった。
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読めない漢字が沢山あったので辞書を引きながら。 時折出て来る横文字が洒落てます。 夢と現のあわいに漂う6編。
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「夢ちがえ」「狐媚記」「画美人」が特に好き。後味は決して良くない、むしろ残酷と言ってもいいような話なのに、美しい物語だったと感じる不思議な読後感。端正な文章の中に時折顔を出す悪ふざけ(と言っていいのか分かりませんが)がくすりと笑えて楽しい。「(省略)。特異体質だな。」「いやですよ...
「夢ちがえ」「狐媚記」「画美人」が特に好き。後味は決して良くない、むしろ残酷と言ってもいいような話なのに、美しい物語だったと感じる不思議な読後感。端正な文章の中に時折顔を出す悪ふざけ(と言っていいのか分かりませんが)がくすりと笑えて楽しい。「(省略)。特異体質だな。」「いやですよ。そんな近代のテクニカル・タームは存じませぬ。」。ついつい笑わされる。
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裏表紙に“あやかしの物語”と書かれていたけれど、不可思議というひと言では片付けられない世界だった。この作品を読んでいる最中、二度ほど憑き物的な夢を見た上、金縛りにもあった。脳が独特の魔術にかかってしまったのかもしれない。 淫靡でもあり、エッシャーの騙し絵のような怖さもある。洒落に...
裏表紙に“あやかしの物語”と書かれていたけれど、不可思議というひと言では片付けられない世界だった。この作品を読んでいる最中、二度ほど憑き物的な夢を見た上、金縛りにもあった。脳が独特の魔術にかかってしまったのかもしれない。 淫靡でもあり、エッシャーの騙し絵のような怖さもある。洒落に富む上質でリズミカルな文章がなんとも小気味よかった。 澁澤龍彦、怖いもの見たさ的興味で、その扉の奥をもう少しだけ覗いてみたい気がする。
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澁澤龍彦ならではの耽美な世界〜後白河法皇の時代に眠り続けるうつくしい姫の話など、日本の時代物を揃えた短編集。教養に裏打ちされた流麗な文章で読ませます。所々わざと肩すかしがある粋な作りなので、ストーリーは??だが、耽美は論理的じゃないのね〜役には立たないのよねと何やら納得。
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