怪奇探偵小説集(1) の商品レビュー
アンソロジスト鮎川哲…
アンソロジスト鮎川哲也の力量がわかる1冊。とてもバランスがよく、内容の詰まった本になっている。
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しょうもないような話…
しょうもないような話もあるのですが、それが逆に楽しいアンソロジーです。
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主に戦前の探偵小説の…
主に戦前の探偵小説のアンソロジー。無名作家の作品も楽しめます。
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戦前の作品によく見ら…
戦前の作品によく見られる、最後のどんでん返しが多い。平林初之輔の遺稿「謎の女」を書き継いだ、井上靖の文の上手さが印象に残った。
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夭折の画家、村山槐多…
夭折の画家、村山槐多による、人肉嗜好を描いた「悪魔の舌」をはじめ、江戸川乱歩、大下宇陀児、小酒井不木らによる怪奇短篇十八篇を収録。
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戦前・戦後の探偵作家の怪奇短編を集めたもの。とはいえ、怪奇に対する考え方が現在と当時では明らかに違う。 現在では怪奇とは「何か説明のつかないもの・こと」であり、必ずしも怪異の正体や原因が明かされるわけではなく、むしろ怪奇現象の只中に放り出された形で終わるのに対し、この作品が収められている昭和初期では怪奇とは「恐ろしいもの・こと」や「途轍もなく気味悪いもの」であり、怪奇の正体をセンセーショナルに描く。粘着質の文体で以って執拗なまでにイメージを喚起させる手法が取られている。 当時流行ったフリーク・ショーといった見世物小屋の舞台裏に光を当てて怪奇の正体を眼前に見せ付ける、これが現在の怪奇と決定的に異なるところだ。 これはこの短編集の名前が怪奇「探偵」小説と銘打たれているからで、「探偵」と名のつく限りはその怪奇現象の謎は解かれなければならない。ほとんどが最後に論理的に怪奇が解決されていたのが特徴的だ。 18編の中には人食、死体愛好もしくは死体玩具主義、殺人願望、異常性欲など江戸川乱歩ばりの変態嗜好を扱った作品が並ぶ。 秀逸だったのは「悪魔の舌」、「地図にない街」、「謎の女」の3編か。 「地図にない街」は都会に棲む乞食の世界をベースにある老人の企みを描くアイデアが良く、「謎の女」は平林初之輔の未完原稿を若き日の井上靖である冬木荒之輔が完成させたものだが、この冬木が創作した部分がこの作品の質を高めているのは誰もが認めることだろう。平林のパートでは単に逗留先で知り合った女と突然、東京で仮の夫婦生活をするという設定のみだったのを、冬木のパートではその設定を女の異常な性嗜好から起こる惨劇への序章へ結びつける力技に感服した。 しかしもっともよかったのは「悪魔の舌」。悪食及び人喰嗜好の描写の生々しさはもとより、それに加えてを最後の驚愕の真相を用意していたのが素晴らしい。伏線も活きており、この1編がこの短編集の牽引力を担っていたのは確か。 各編においては最後のオチが三流落語咄の域を脱していないものがあるのも事実で、「怪奇製造人」、「乳母車」、「幽霊妻」などがそれらに当たる。 また最後のオチが誰々の創作だったというのも目立った。 全作品を通じて思ったのは、これらは怪奇小説集というよりも残酷小説集の方が正鵠を射ている事。 玉石混交の短編集だが、なぜか妙に惹きつけられた。②巻、③巻も愉しみだ。
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怪奇小説アンソロジー。 昔の小説の素敵なところは、会話のくすぐったさ。 松浦美寿一の「B墓地事件」の、魂となって訪れた友人との会話シーンは(文章的には拙いながらも)美しくてうっかり萌えた。 怖いと言えば殺人やカニバリズムよりも、異常人とレッテルを貼られて陥れられたりするパターンが...
怪奇小説アンソロジー。 昔の小説の素敵なところは、会話のくすぐったさ。 松浦美寿一の「B墓地事件」の、魂となって訪れた友人との会話シーンは(文章的には拙いながらも)美しくてうっかり萌えた。 怖いと言えば殺人やカニバリズムよりも、異常人とレッテルを貼られて陥れられたりするパターンがつくづく怖いな、と(橋本五郎・地図にない街)。 知らぬうちに他人に利用され、最後は社会的に抹殺されてしまうパターンは、怪異や幽霊に出会うのと同等かそれ以上に勘弁願いたいと思う。 2、3と続刊らしいので機会があったら読むつもり。
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えげつなかったりさむくなったり、ちょっと不可解なお話がたくさん集まった短編集。傾向に好き嫌いが別れそうではありますが、それぞれ雰囲気のある作品でとても楽しめました。 いろいろな作家さんに出会える楽しみも味わえて、短編集に興味を持ったきっかけの一冊。
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(「BOOK」データベースより) 夭折の画家、村山槐多による、人肉嗜好を描いた「悪魔の舌」をはじめ、江戸川乱歩、大下宇陀児、小酒井不木らによる怪奇短篇十八篇を収録。本格推理小説の雄にして、名アンソロジストでもある鮎川哲也が贈る怪奇と幻想の世界。
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全体として昭和の文学文体がツボすぎる。 私は大学時代民俗学なんか専攻してただけあって大層な懐古趣味でして、こういった戦前の文章なり風俗なりが大好きだったりします。 「ドグラ・マグラ」とかも好きです(読みにくくて読むのに一年くらいかかったけど)。鮎川先生ぐっじょぶ! 解説も最高で...
全体として昭和の文学文体がツボすぎる。 私は大学時代民俗学なんか専攻してただけあって大層な懐古趣味でして、こういった戦前の文章なり風俗なりが大好きだったりします。 「ドグラ・マグラ」とかも好きです(読みにくくて読むのに一年くらいかかったけど)。鮎川先生ぐっじょぶ! 解説も最高でした。 あとほぼ一人称形式の話ばっかりだったんですが、当時の流行というか主流はやっぱ一人称だったのかな。 でもまあワトソン役もしくは案内役が語る形式がやっぱ探偵小説の醍醐味ですよね。王道万歳。 実はこの本は先日整理してた父の古い蔵書から貰ってきたモノなんですが、思わぬめっけもんでした。いいもん拾った…! 以下ネタばれ感想です〜。 「悪魔の舌」@村山槐多 ラストまで読まなくてもオチが読めてしまうんですが、わたしは結構こういうの好きです、ベタベタな上に濃くって(笑)。 タイトルからうっかりホームズを連想しましたが、あれは「悪魔の足」でしたね。 「白昼夢」@江戸川乱歩 流石の大御所。いかにも乱歩ぽい一作です。 「怪奇製造人」@城昌幸 何故かこの話は知ってました。 以前読んだことあるんですが一体どこで読んだのだろう。謎です。 でもほとんど寸分違わず記憶に残ってました。 「死体蝋燭」@小酒井不木 どっちかというと落語っぽい印象を受けてしまうのは舞台立てが寺で和尚さんと小僧さんが出てくるからでしょうか(笑)。 なかなかの洒落っ気です。 「恋人を食う」@妹尾アキ夫 系統としては「悪魔の舌」と一緒。やっぱ人喰いって魅力的なテーマなのかなあ(←私は興味ありませんが)。 鮎川先生も解説で書かれてましたが確かにこちらの方が同じ食人テーマでも洗練されてますね。最後にニヤリ。 「地図にない街」@橋本五郎 貴族って不条理…。こういう都会の隙間をすり抜けた生活の描写って好きです。多分わたしがシャーロッキアンなことに関連があるのではないかと。日常の中の非日常って魅力的です。 にしても貴族ってひどいよなあ…。 「生きている皮膚」@米田三星 一瞬人面疽?と思ったんですがそういう話ではありませんでした(笑)。 でもまあ淳子さんは皮膚に復讐されたんだしなあ…ホラーかな? 呪いの連鎖つうか恨みの連鎖つうか。 皮膚移植のとこは非常に痛々しい話だった。 「蛭」@南沢十七 この短編集の中で個人的には一番気持ち悪い…というかイタイ話でした。イマイチオチがはっきりしない感もあるのですがまあこういう話では不気味さがより誇張されていいような気も。 吸血療法ってなんだよ〜(笑)。 「恐ろしき臨終」@大下宇陀児 老弁護士が哀れ過ぎる…。てか最後の最後で突然全くの第三者がババーンと犯人として名乗り上げるあたりかなりミステリとしてはアンフェアなような気が(大笑)。でも語り口は好きな感じです。島田御大の「龍臥亭事件」みたいな舞台立て。乱歩にもこんな話あったような。 「骸骨」@西尾正 妻を亡くした性欲の強いあまりのオナニストって…!(爆笑) しかも表記は「Onanist」です。これだけでももうかなりすごいんですが、まあオチとしては普通かな〜。こういう横文字混在のケレン味たっぷりの語り口はわたしは好きだ。機会があったらやってみたいんですが教養がないと普通に難しそうなんだよなあ…。 「舌」@横溝正史 横溝にしては泥臭さのない作品。むしろ洒脱で美しくかなり好みの短編です。鮎川先生じゃないですが確かに乱歩の「白昼夢」と通じるところが。余韻がいいです。 「乳母車」@氷川瓏 実はこの短編集で一番好き。掌編なんですが物凄い雰囲気あります。幻想小説もたまにはいいよなあ〜とか思ってて、そういえば自分が泉鏡花好きだったことを思い出しました。 「飛び出す悪魔」@西田政治 ある意味戦前探偵小説の王道。サーカスが舞台なあたりとかもうたまりません。登場人物の名前のつけ方が好きかな。昔のサーカスの謎めいたいい意味で胡散臭い雰囲気が存分に楽しめて良。 「幽霊妻」@大阪圭吾 犯人力士ってさ!(爆笑)短い中で全ての謎や伏線にきっちりカタをつけているあたりは確かに将来を嘱望された探偵小説の担い手だなと感心しました(若くして戦死なさったとのことです)。それでもオチでどうしても京極先生の「どすこい。」を思い出してしまうわたし…。ごめんなさい。
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