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言語学的文法構築の基本問題 の商品レビュー

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2009/10/04

この本は主に1992年から97年にかけて、主に「東京外国語論集」に掲載された「言語学的根本態度決定のためのもろもろの選択肢」と題するシリーズを1冊の本にまとめたもの。各論文の内容は、「構造主義か非構造主義か」、「メンタリズムかメカニズムか」、「首尾一貫性か明示性か」、「リングイス...

この本は主に1992年から97年にかけて、主に「東京外国語論集」に掲載された「言語学的根本態度決定のためのもろもろの選択肢」と題するシリーズを1冊の本にまとめたもの。各論文の内容は、「構造主義か非構造主義か」、「メンタリズムかメカニズムか」、「首尾一貫性か明示性か」、「リングイスティックスかフィロロジーか」、「合理論か経験論か」、「演繹か帰納か」、「人間か機械か」という二者択一を迫る(と言っても迫ってるわけではない。さらに、二者択一ではないことも読めば分かるが)内容で、人文科学、社会科学、自然科学の間で揺れる言語学という学問に対する様々な研究者、研究態度が著者の見解と共に整理されている。  ほとんどの章ではチョムスキー及び生成文法が槍玉にあげられており、生成文法批判の嵐である。おれ自身としては特に「首尾一貫性か明示性か」というテーマが目からウロコで、「定義」の問題については考えさせられた。「リングイスティックスかフィロロジーか」の部分も関心があったので、興味深く読んだ。特に「フィロロジーは労ばかり多くて報われることの少ない」のに対して「リングイスティックスは他人の褌で相撲を取る、そしておいしいところだけをもらうという、大変怪しからぬ仕事」(p.115)の部分には言い得て妙。そして著者はフィロロジーの重要性を説いている。「演繹か帰納か」の部分では一部に論文の書き方についてのアドバイスも載っている。  いずれのテーマにせよ、著者の見解と照らし合わせながら、それぞれのタイプについて自分はどう思うか、さらに自分自身はどちらのタイプなのか、を探っていくきっかけとなる点が面白い。その点、こんなことを言うと怒られてしまうが、最後の「人間か機械か」は蛇足のような気がする。

Posted byブクログ