花までの距離 の商品レビュー
ストーリーそのものよりも細部の描写。湿度がなく、キリリとしたエロティシズム。それを頭の中に映像として再現することの快感。 「〜と、彼はひとりで理屈を作った。そしてその理屈に満足を覚えた。」(p.308) 花までの距離、それは永遠なのか? (p.312) 「恋愛を超えた信頼関...
ストーリーそのものよりも細部の描写。湿度がなく、キリリとしたエロティシズム。それを頭の中に映像として再現することの快感。 「〜と、彼はひとりで理屈を作った。そしてその理屈に満足を覚えた。」(p.308) 花までの距離、それは永遠なのか? (p.312) 「恋愛を超えた信頼関係です。」(p.324) 見る/見られる
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長編小説、とあるが連作短編と言ったほうが正しいかもしれない。 片岡作品の中では「なにもないから愛にしましょう」と1位2位を争うほど何度も読み返している、とても気に入っている作品。 片岡義男の恋愛小説はたぶん小学生のときから読んでいる(小学生から中学生にかけて、やたら主人公が...
長編小説、とあるが連作短編と言ったほうが正しいかもしれない。 片岡作品の中では「なにもないから愛にしましょう」と1位2位を争うほど何度も読み返している、とても気に入っている作品。 片岡義男の恋愛小説はたぶん小学生のときから読んでいる(小学生から中学生にかけて、やたら主人公が30、40代の恋愛小説ばかり読んでいたなぁ)。 高校でしばらく同世代の小説ばかり読んでいたけど、最近また読み返している。 本作の登場人物は「彼」と「彼女」。片岡作品では珍しく名前がない。 どこまでも魅惑的な彼女と、そんな彼女に心底感銘し賞賛する彼。2人だけで世界は完結する。 街で、デパートの試着室で、飛行機の座席で、プールで、そしてホテルの部屋で、彼女は様々な形でオート・エロティシズム(この表現いいね)を試し、彼に披露する。 彼は一貫して見る立場であり、けして彼女に触れようとはしない。 彼女の行為は次第に完成度を増し、そのたびに彼は彼女に引き込まれていく… 作品内で、彼女は自分の目標を「理知的で性的な女」と言う。 これ昔からすごく同感なんだよね。うちの価値観に影響してる。 あ、あと引用がうまく使えるのって理知的だよね。 それと感心したのが喫茶店のシーンでのこの会話。 「午後三時だ」 「午後三時を少し過ぎたばかりです」 「おやつの時間だ」 「あなたは私のおやつですか」 こんなセリフがとっさに出てくるようになりたいね。 それにうなずいて「僕はきみのおやつだ。エスプレッソを注文すると、ひとつ添えられて出て来る」って答える人もなかなかいないと思うが(笑) はじめに連作短編といったけど、それぞれの話(出来事)は後半に向けた大きな流れを持つ。 最後2,3章の盛り上がりはもの凄い。 終わりの章できちんと締め括られている。 ほんと、2人だけの世界が完結している。完成品。
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