ハプスブルク帝国の近代化とヨーゼフ主義 の商品レビュー
一八世紀オーストリア史を、マリア・テレジア、ヨーゼフ二世、レオポルト二世の国家改革を中心に描き出す研究。前編でこの三人の治世が概観され、後編ではヨーゼフ主義というオーストリアの思想潮流が(とりわけ宗教)政策にどのように影響したか、当時のオーストリア知識人の代表格であるゾンネンフェ...
一八世紀オーストリア史を、マリア・テレジア、ヨーゼフ二世、レオポルト二世の国家改革を中心に描き出す研究。前編でこの三人の治世が概観され、後編ではヨーゼフ主義というオーストリアの思想潮流が(とりわけ宗教)政策にどのように影響したか、当時のオーストリア知識人の代表格であるゾンネンフェルスがその中でどのような位置を占めているかが対象となっている。君主個人の施策・考え方だけではなく、君主たちを支えた政治家、ハウクヴィッツやカウニッツについても彼らの本質的な部分に言及されている。それに加え、特に戦後盛んになったオーストリアジャコバン主義とヨーゼフ主義の関係をめぐる研究についても、研究動向の紹介から本論への組み込みまで、丁寧な解説が施されている。あとがきでは本書を「序説」とも言うべきものと書かれているが、それに従うならば、本書を出発点として、啓蒙絶対主義の典型とされる一八世紀プロイセンとオーストリアを等族制の観点から比較する、オーストリアジャコバン主義のイデオロギーがどのタイプの政治言語に属しているのか、革命フランスの政治言語と比較するなど、色々な展望が考えられるのではないだろうか。
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「寛容こそ、人々をその住地に定着させ、各々の職分において多くのことを達成せしめるために必要な条件である。宗教的迫害行為に赴き易い教条主義や不寛容主義は、国家をしてその住民を根絶させ、貧困ならしめ、かつ無秩序の状態を現出せしめるにいたるであろう」。 ヨーゼフ二世が促進した宗教的寛...
「寛容こそ、人々をその住地に定着させ、各々の職分において多くのことを達成せしめるために必要な条件である。宗教的迫害行為に赴き易い教条主義や不寛容主義は、国家をしてその住民を根絶させ、貧困ならしめ、かつ無秩序の状態を現出せしめるにいたるであろう」。 ヨーゼフ二世が促進した宗教的寛容論を詳しく学ぶことのできる一冊。 読むまで、ウィーン(ハプスブルク帝国)という大地が実は、多元的空間であったことを失念していたのがorzだった。
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