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生命倫理学を学ぶ人のために の商品レビュー

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2021/05/13

生命倫理学の入門書です。 第一部で、生命倫理学の基本的な考えかたと、生命倫理学の成立史およびわが国における受容史が簡潔に紹介されたあと、第ニ部で生命倫理学の基本的概念が解説されています。とりあげられているのは、「インフォームド・コンセント」「パターナリズム」「パーソン論」「生命...

生命倫理学の入門書です。 第一部で、生命倫理学の基本的な考えかたと、生命倫理学の成立史およびわが国における受容史が簡潔に紹介されたあと、第ニ部で生命倫理学の基本的概念が解説されています。とりあげられているのは、「インフォームド・コンセント」「パターナリズム」「パーソン論」「生命の神聖さ(SOL)と生命の質(QOL)」「医療資源の配分」「ケア」の六つの項目です。それぞれの項目について三人の執筆者の論文が収録されており、一人目の論者は概念とそれをめぐる基本的な問題点を解説し、つづくニ人の論者がそれぞれの立場からの考察を展開するという構成になっています。中立的な解説と、それぞれの執筆者の立場からの突っ込んだ議論を同時に学ぶことができます。 第四部は「生命倫理学の展望」というタイトルが付されている。ここに収められている品川哲彦の論文は、哲学や倫理学の研究者が生命倫理学においてなにをするべきかを論じていて、興味深く読みました。生命倫理学の問題にかかわるのは哲学者や倫理学者だけではなく、経済学、法学、政治学、社会学、文化人類学、宗教学、科学論などさまざまな研究分野の専門家が、みずからの意見を表明し論じあう「入会地」が生命倫理学だと著者はいいます。そのうえで、道徳の権威としてその入会地に君臨する生命倫理学者は存在しないと著者は主張し、生命倫理学の研究者の任務とは、入会地を多様な主張の持ち主が自由に参加できる入会地として守りつづけることにあると結論にづけています。こうした著者の議論は、生命倫理学をはじめとする応用倫理学の役割を明快に提示したものということができるように思います。

Posted byブクログ