禅の境涯 の商品レビュー

沢木興道(著者)

2016/08/23

提唱としては些か物足りなさを感じる。もう少し「此の事」に肉薄してもよいのではないかと思うのは厚顔か。
例えば、「現前を得んと欲せば、順逆を存すること莫かれ」とあるが、「現前」とは何か。今、「此処に在る事」が掴めているかどうか、生のリアリティであると直感するが、では生きている事実に対して、どれだけのリアリティを持てば「現前」なのか。
定量化できない事ほど、先達は緻密に扱うべきである。その真摯さの中に、後進は工夫を繰り返す志を新たにし、死に切ってこれるのだから。