オン・ハッピネス の商品レビュー

田中康夫(著者)

2018/08/09

ファミレスでアルバイトをしている19歳の橋爪摩耶（はしづめ・まや）は、かつて交際していた岩元敏也（いわもと・としや）という男に再会し、一夜をともにすることになります。そこで彼女は、敏也からＡＶに出演することをすすめられます。敏也に紹介されて会うことになったＡＶプロダクションの栗原正明（くりはら・まさあき）という男の真摯な態度に、摩耶の心は動きます。

一方、夙川出身で20歳の橘由美子（たちばな・ゆみこ）は、恋人の前嶋邦彦（まえじま・くにひこ）から、ミスコンテストに出場することを求められます。ミスコンテストの創設に父親がかかわっていたことを知った由美子は、縁を感じて出場することを決意しますが、不思議な縁が災いして、優勝はやはりこのコンテストに出場していた摩耶の手にわたることになります。その結果、摩耶のＡＶ出演の話は立ち消えとなり、他方会場で栗原に出会った由美子が、ＡＶへの出演を打診されることになります。

著者小説のなかでは、ドラマ性が強く作り込まれたストーリーが印象的な作品です。対称的な二人の女性が、奇妙な運命の交錯によってその立ち位置を変えることになっていく経過がおもしろく感じました。