公共事業と環境の価値 の商品レビュー
自然環境が大事だってことは、だれでも知っている。 でも、それがどれだけの価値をもっているかってことは、実は誰もよく分かっていない。 ときどき、「この森の保水能力はダム何個分で、、、」なんて形で、森林の価値をわかりやすく説明したりしてるけど、森林の持つ価値はそれだけではないはずな...
自然環境が大事だってことは、だれでも知っている。 でも、それがどれだけの価値をもっているかってことは、実は誰もよく分かっていない。 ときどき、「この森の保水能力はダム何個分で、、、」なんて形で、森林の価値をわかりやすく説明したりしてるけど、森林の持つ価値はそれだけではないはずなんだ。 そこに生息する生物の存在は?僕らがそこを訪れることで生じる価値は?あるいは、自然がそこにあるだけで発生している価値は、、、、。 仮想市場評価法CVMはそれらを明らかにする可能性を秘めている手法だ。そして、その適用範囲は自然から文化遺産、環境汚染、文化政策まで幅広い。 この本は、そのCVMについて、その背景から適用方法、陥りやすい間違いを、やこの手法の限界を、丁寧に解説してくれる。著者である栗山浩一先生自身の経験とともに、世界中で適用されたケースを通し説明され、先行研究までがまとめられている。 もちろん、ケースの説明や、CVM全体の概説だけでなく、きちんとした経済モデルの提示と、その適用方法も書いてある。それが、この本の良いところだ。単なる、入門でなく、しっかりとした研究の手法も書いてあり、これを参考にしながら、自分の研究を考えて行くことができる。 出版から少し年月がたっているので、発展著しいCVM研究事例は、この本の巻末に集録されているよりも、さらに増えているが、この本でまとめられている事、書かれている事は、これから環境評価や文化財の評価、文化政策、都市政策などで、CVMを使おうとする人にはとてもよい手引きとなるだろう。僕自身、研究の過程でなんどもこの本を手にとり、考えを深め、海外の研究論文でわからない部分の確認などを行なった。 文章も丁寧でやさしく書いてあり、学部生、経済を深く勉強していない他分野の院生などでも読みやすく出来ている。 専門的で、充実しているが、読みやすい。 このような専門書が増えて行けば、学問や研究の面白さが多くの人に伝わり、また研究者の質も高まるのではないだろうか。
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