家紋の話 の商品レビュー
“パズルの会社ニコリによる、パズルっぽい情報発信サイト「次ニコ」”というWebサイトがあり、その過去記事アーカイブをかたっぱしから読むという遊びを、最近スキマ時間にするようになった。そうしたらその中のとある記事で、「泡坂妻夫の『家紋の話』という本は名著」との一文に出くわしてびっ...
“パズルの会社ニコリによる、パズルっぽい情報発信サイト「次ニコ」”というWebサイトがあり、その過去記事アーカイブをかたっぱしから読むという遊びを、最近スキマ時間にするようになった。そうしたらその中のとある記事で、「泡坂妻夫の『家紋の話』という本は名著」との一文に出くわしてびっくり。思いがけないところでのアワツマさん登場に(…というほどニコリとアワツマとはかけ離れた存在ではないと思うが、でもまあ予期はしていなかったから)叫びそうになるくらいの驚きと喜びとに襲われたが、その興奮冷めやらぬうちにさっそく図書館で借りて読むことができた。 ミステリー作家の泡坂妻夫さんは東京神田の紋章上絵師(和服に紋を入れる絵師)の家に生まれ、ご自身も家業を継いで上絵師として仕事をされている。そんな泡坂さんが語る家紋の話は、学者先生の語る「紋章学」とは一味違う(らしい)職人目線のものになっており、実用価値、作画方法、紋そのものの美しさといったことに焦点を当てているのが印象的。 特に私が興味深く思ったのは、「日本の紋らしさ」とはなんだろうということ。時代ごとに「紋帳」を追っていくと、だんだんとデザインが洗練されて“紋らしく”なっていくことが、泡坂さんの解説によりよくわかる。確かに、まるでiPhoneのアプリアイコンさながらに作画ガイドラインに沿って作られたかのような統一感がある。しかも統一感の中に遊びもある。その秘密がなんなのかは言葉にできないけれど、特に江戸時代の人々の美意識と遊び心、職人たちの素晴らしい仕事、数学/幾何学/パズル的な美しさを楽しむ人間の心、そういうものが関係しているのだろうなあ、そしてそういうものを泡坂さんは敬愛しているのだろうなあ、それが感じられただけでアワツマファンとしてはじゅうぶん幸せだなあ、と思った。 そして最後、現代生活ではすっかり存在感を失ってしまった紋を再び模様に還元する企みとして、オリジナルの模様を作画して披露してしまうところがアワツマ真骨頂。「上絵師小紋帳」と名付けられたそれは、紋であり、模様であり、パズルであり、マジックでもあるかも(さすがに言い過ぎか)。しかもそうして作った模様のうちのいくつかは、彼の小説に使われているらしい。どういうこと?ちなみに『角平市松』と『からくり東海道』の二作品とのこと。 アワツマ愛が深まったと共に、いやあニコリさん、確かにこちら名著でしたし、パズルって広くて深いですね!という気持ち。
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小説ではないので夢中になる本ではない。 紋という全く未知の世界の話で大変勉強になった。泡坂が言っている様に、日本だけの美しい芸術という観点に立つと衰退が大変もったいなく思うが、かと言ってじゃあ、和服を着ましょうとか、着物や暖簾以外の今の日常に必要な品につけられるかというと、それ...
小説ではないので夢中になる本ではない。 紋という全く未知の世界の話で大変勉強になった。泡坂が言っている様に、日本だけの美しい芸術という観点に立つと衰退が大変もったいなく思うが、かと言ってじゃあ、和服を着ましょうとか、着物や暖簾以外の今の日常に必要な品につけられるかというと、それも難しそう。 まず、明治以降「家」という繋がりがどんどん薄れている。家のマークを定める必要がないし、返って、今の世の中無粋なこととなってしまっている。その生活の変化によって紋という芸術が消えてしまうのは、しかたがないことなのだろうか。
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