荒野に叫ぶ声 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
朝の6時台のNHKラジオ第2で、たぶんもとNHKアナの山根基世さんだったと思うんだけど、が紹介されていた本。というか、確かあのときこの作者の雫石とみさんを紹介されていた。 貧しい田舎に生まれ両親とは死に別れ、弟とは生き別れ、東京に出てくる。やっとできた家族も空襲で失い、地を這うようにして戦後10年を生きられた。目の病気をきっかけに「福祉」を頼り、当時存在した「収容所」に入所する。その「収容所」での5年間の日記をもとに書かれた本だという。現代の私たちには少々わかりづらい言葉や風俗もあるが、それ以上に当時生きた人々の息遣いが伝わってくるように思う。 山根基世さんによると、小学校しか出ていない(当時としては特に珍しいというものでもなかったが)彼女は、最初の頃、一字一字ひらがなから思い出すようにして言葉をつづっていたのだという。それにしては、その語彙・表現力は現代のそのへんの大学生より上ではないかと思うほどだ。 終盤、その日記を盗み読まれることで結果的に収容所を退所することになるのだが、乏しい支給金(今の生活保護費の原型のようなものだろう)の中から筆記具を捻出してまで書き続けたのは、「そうしなければ生きていられなかった」かららしい。たまたま読んだ新聞にも、妻の亡くなった後日記を書き続けてきた男性が、数年経って気持ちが落ち着いてきた様子を投稿されていた。 「書く」という行為は、時として人に特別な力を授けるのかもしれない。そういえば、ストレスを発散するのに一番いい方法はやはり日記またはシナリオのように書き綴ることというようなこと、この間見たバラエティ番組でも心理カウンセラーみたいな人が言ってたっけ・・。私自身も、人生で一番つらい時期に、信頼できる人に愚痴を聞いてもらうことと書き綴ることで乗り切っていたような気がする。
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