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華人資本の政治経済学 の商品レビュー

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2011/06/04
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発展過程において変容していく東南アジアで、議論を避けることのできない華人経済に焦点を当てた書である。 華人の特徴として、東南アジアの元々いた存在ではなく、外部から二次的に入り込んだものであるということ、やがては土着化して、心は東南アジア化する一方で身は華人だということ、そしてそのような存在であるにもかかわらず、現地では華人の生活習慣を守っていることが挙げられる。 一般的に華人資本をイメージすると思い浮かぶような、金融システムそのものを支配している、といった事実は、データを見れば明らかになるが存在しない。にもかかわらず悪いイメージをもたれているのは、政治的不信感、経済的反発、社会的違和感が重なって、民族集団の中では今でも反華僑意識が流れているという。 華人資本が台頭できたのは、東南アジア政府の表と裏の使い分けによってである。要するに、表向きは国民のために反華人という立場をとるが、裏では華人の経済力やネットワークを利用して、国力の発展に努めたのである。これは、華人は選挙権を持っていなかったので、経済的に利用しても政治的領域に干渉されることがなかった、というのが大きい理由であろう。その発展度合いや、所有する企業の分野も国によって様々であるが、裏向きの性格はどの国家にも見られる減少である。ある意味ではWin-Winの存在であったといえるのではないか。 個人的には、土着化するが習慣は遵守するといった点に、華人経済の力強さを感じる。華人資本が発展した理由は、上記の政治的結託のほかに、零細から始まったにも関わらずネットワークや産業連関を駆使して発展したことが挙げられる。これは、土着化した国家内では現地語を話すが、同族が集まるときには中国語を使うといったように、彼らの、「習慣を遵守する」考えからきているように思える。例えば、アメリカの日本人街では完全に土着化が進み、二世三世になると日本語を話せない人もでてくるし、ネットワークも希薄である。一方で世界全体に見られるチャイナタウンの存在は、華人資本とは何か、といった問いに明確に答えているのではないだろうか。

Posted byブクログ