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時代の風音 の商品レビュー

3.5

24件のお客様レビュー

  1. 5つ

    2

  2. 4つ

    9

  3. 3つ

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20世紀とはどんな世…

20世紀とはどんな世紀だったのか。また、国家、宗教、文化などを通して知ることができる。

文庫OFF

歴史の潮流の中から「…

歴史の潮流の中から「国家」「宗教」、そして「日本人」がどう育ち、どこへ行こうとしているのかを読み解く。それぞれに世界的視野を持ちつつ日本を見つめ続けた三人が語る「未来への教科書」。

文庫OFF

2025/01/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

宮崎 自分自身がものを考えるようになったときに、左翼になろうかと心情的に思いました。実際は『資本論』も読めなかった人間ですが、いまでもちょっとそうです。  伝統的なものすべてが戦争に日本人を運び込んだ犯人であって、それを、「古い上着よさようなら」と脱ぐしかないんだと、だから礼儀作法も敬語もあえて覚えない。そうするしか、残念ながら自分を確認するよりどころが見つからなかったんです。  その結果、自分の子供たちを育てるとき、本当に行き当たりばったりにやってきただけ、というじつに寒々とした思いがあります。 堀田 戦時中に左翼だった人で、満鉄にいたり大使館を手伝っていたりした人は、戦後は荒れましたね。酔っぱらって、まあ、ほんとに荒れました。 司馬 〝びよい〟というのは大阪弁で〝堅牢でない〟という意味ですけど、日本の左翼はびよいですね。機械でいえばすぐ壊れるという感じの言葉です。  そのわけは、日本の歴史をリアリスティックにみてこなかったからです。たとえば〝天皇制〟というだけで、日本がすべてわかったような気になっていました。  ほかの人間を何万人も農奴にしていたというロシアでは、ツァーの首を切ればそれでロシア革命は成立します。その革命の成立を、そのまま日本史に対しても同じ思い込みで解釈していた。天皇制という実態のない言葉をつくって、それをロシアにおけるツァーのように敵にしてかかった。 堀田 中国で『白毛女』という芝居を見せられて戻ってきてから、中村光夫に「あんなものターザンじゃないか」と言ったら、中村光夫、怒ったな。あの人は昔、左翼で、革命中国へ行ってひじょうに興奮しましたね。青年時代の左翼がいっぺんに戻ってきてしまった。 司馬 新中国成立の初期に訪中した旧左翼の人たちは、自分自身の観念の中で喜んでいました。それが、他のふつうの日本人から見ると思想として惨めな姿でした。惨めというのは、生き物である中国を見ずに、自分の観念の中で切り紙細工をしていたという意味です。 宮崎 観念的にしかものを見られない弱点は、ほんとうにありますね。ピンポン外交のときに、国挙げてこんにゃくになっちゃんですね。実に手玉に取りやすい民族です(笑)。 堀田 どこかで講演したときに、日本人はいましきりに国際化、国際化と言いますけども、みなさんは国際化ということを日本人がどこかへ出て行くことのように思っていらっしゃるかもしれませんが、国際化ってものは、日本の中の国際化であって……。 司馬 そうです。いちばんだいじなのはそれですね。 堀田 近所在住の半分が外国人になるとしたら、そういう国際化が実現したとしたらどう思いますかって言ったんです。そうしたら、聞いてる人みんなシーンとなっちゃった。 司馬 そうです。ほんとうに英語をしゃべってどっかの国で仲良くパーティをやって帰ってくるのが国際化じゃありません。 堀田 奈良朝時代、奈良の町は国際化されていて、半分くらいは外国人じゃないですか。 司馬 そうかもしれませんね。奈良朝の人たちは外国人、内外国人、という意識がはっきりしなかったから、明日香は漢人(あやひと)というか、朝鮮に存在した古い楽浪郡の中国文化をもっていた人たち――そういう知識人の集落でした。ですから、恐らく、「明日香風」という言葉もあったぐらいですから――万葉の「采女の袖吹きかへす明日香風」――ナウイところだったのではないでしょうか。  むろん漢、唐の都・長安だって、人口百万人のうち何パーセントかはイラン人だった。そうでないと長安の輝きはないんです。世界有数の国際都市だったから。その後『唐詩選』の詩人たちも長安を礼賛した。結局そのときだけは中国は外に開かれていましたが、その後、宋の時代にはもう内国、内国、内国……で今日に至っている。長安の栄光というのは、国際化のものでした。 『長安の春』の著者の石田幹之助さんが、漢詩を綿密にピンセットでつまみあげるようにして発見するのですけれど、当時、長安のバーにはやっぱりカウンターがあるんですな。イラン系の女の人がバーの主人です。ママさんです。それでカウンターの後ろには酒棚があって、中国酒でなく葡萄酒が出なければ長安のバーではないわけ。それほど異国的な文化、風俗が流行してた。 宮崎 いま日本のバーでやっていることは、昔、中国でやってたわけですね(笑)。

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2024/05/15

64冊目『時代の風音』(堀田善衞/司馬遼太郎/宮崎駿 著、1997年3月、朝日新聞出版) 宮崎駿が聞き手となって行われた、彼が尊敬する2人の作家、堀田・司馬両氏との鼎談を文章に起こしたもの。時期としては、おそらく92年前半頃に行われたものだろう。 膨大な知識に裏付けされた史観から...

64冊目『時代の風音』(堀田善衞/司馬遼太郎/宮崎駿 著、1997年3月、朝日新聞出版) 宮崎駿が聞き手となって行われた、彼が尊敬する2人の作家、堀田・司馬両氏との鼎談を文章に起こしたもの。時期としては、おそらく92年前半頃に行われたものだろう。 膨大な知識に裏付けされた史観から、宗教や戦争、国家、人類などについての議論が展開されてゆく。現代を予見するような発言も多く、真の知識人とはこういう人たちのことを言うのかと大いに感心させられた。 〈差別はわれわれの没落につながります〉

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2023/11/12

現代を代表する知識人・宮崎駿にとっては、故・堀田善衛と故・司馬遼太郎は仰ぎ見る知の巨人である。「広場の孤独(堀田)」「明治という国家(司馬)」2つの著書に大きく影響を受けたという。鼎談の言い出しっぺとして、「書生」として、宮崎は聞き役に徹している。この時、2人は未だ壮健だった。実...

現代を代表する知識人・宮崎駿にとっては、故・堀田善衛と故・司馬遼太郎は仰ぎ見る知の巨人である。「広場の孤独(堀田)」「明治という国家(司馬)」2つの著書に大きく影響を受けたという。鼎談の言い出しっぺとして、「書生」として、宮崎は聞き役に徹している。この時、2人は未だ壮健だった。実際読めばわかるが、2人ほど汲めども尽きぬ古今東西の知見を持っている知識人は、今現在果たしているだろうか?私は数えることができない。いや、今の知識人(※)はこんなふうに矢継ぎ早に知を語らない、もっと優しく語るのかもしれない。早計はやめよう。 ※一応断っておくと、単なる物知りを私は「知識人」とは呼ばない。知見の見は見識の見。司馬遼太郎の見識には私は異論を持っているけど、彼は生涯にわたりキチンと見識を披露した。 どうやら92年の鼎談のようだ(92年11月刊行)。中国民主化の失敗、ソ連邦の崩壊、ユーゴ解体そして戦争が起きた後である。彼らの話を聞いていると、まるでウクライナ戦争やガザの今を予見しているような話が出てきてビックリする。 以下少し紹介する。 堀田善衛 イデオロギーが崩壊したソ連ですが、この国はもともと難治の国ですな。←民主化が始まっても、結局は再び元の陰謀めいたボスの秘密会議でソ連邦の幕が閉じた。 司馬遼太郎 (ロシアは最低の資本主義)、つまり闇屋とマフィアと売春婦の資本主義、資本主義の1番初期の1番悪いやつになるでしょうね。 司馬遼太郎 (イスラエルは)あの国もアナザ・カントリーですね(笑)。普遍性の高い、人類とか世界とかの話の中で必ず話の通じない外国が出てきた。これまではソ連が外国でしたが、もうわれわれと同じ国になった。だけどいまや人類にとって外国とは、ピョンヤンでありイスラエルかもしれません。 宮崎駿 20世紀のもう一つの特徴に、マスコミ、とくにテレビの発達があって、武器を使いにくくする作用をもたらしたのではないでしょうか。 司馬遼太郎 電波の発展は、マルクスの予想外の一大要素でした。電波によって大衆がリアルタイムで自他を捉えることができるようになり、政治どころか人心を地滑りのように動かしたという事を、20世紀の後世の歴史家はあげるでしょうな。ユーゴスラヴィアみたいな局地的な喧嘩みたいな戦争はありますけど、大戦争はちょっとやりにくい。 ←未だインターネットは予測できていないけど、言ってることは現在を言い当てている。ウクライナやイスラエルのような局地的戦争はあるけど、確かに第三次世界大戦は起こりにくくなっている。 堀田善衛 (ヒューマニズムとは?の問いに私はこう答えている)西洋では、高速道路は三車線あって、トラックは決して追い越し車線に入ってこない。トラックは、はしの方に数珠繋ぎになって走ってます。追い越し車線は乗用車専用、人間のために残しておく。トラックはモノを運ぶ。だからモノよりも人間を優先する。 (略) ところが、日本ではモノのほうが偉いんだ。 司馬遼太郎 宮崎さんにぜひつくって欲しいテーマがあるんですが、平安時代の京の闇に棲んでいた物の怪のことです。 ←以下、2人で延々と煽るけど、宮崎駿はほとんど黙して語らなかった。その後、「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」をつくったのは、この時の鼎談が影響していたのか?誰かインタビューしてほしい。 司馬遼太郎 (「吾妻鏡」における頼朝亡き後の承久の乱での北条政子の)演説というのは、シェークスピアの劇そのものです。 ((略)政子を歴史上でもっと評価すべきだという堀田善衛の意見に対して)そうです。私は上方の人間ですけど、日本史に一番大きな影響をもたらしたのは鎌倉幕府だと思っています。 ←この時から30年後にNHK大河「鎌倉殿の十三人」が出来上がった。あの北条政子の演説を最後のクライマックスに置いたのは、ホント素晴らしかったし、あそこから最終場面まで、ホントにシェークスピアをやっていた。シェークスピアにせよ、政子や鎌倉時代の評価にせよ、長いこと時間がかかった。いやもしかしたらいまだに評価できていないかもしれない。 等々、古本屋で88円で買ったのだけど、買い得でした。 今、3泊4日で旅の途中。これからあとは旅と記録に集中したいので、レビューとレビュー読みは暫くお休みします。

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2023/07/24

「時代の風音」堀田善衛・司馬遼太郎・宮崎駿著、朝日文芸文庫、1997.03.01 262p ¥525 C0195 (2023.07.21読了)(2008.12.20購入)(1998.04.10/3刷) 【目次】 1 二十世紀とは 2 国家はどこへ行く 3 イスラムの姿 4 アニ...

「時代の風音」堀田善衛・司馬遼太郎・宮崎駿著、朝日文芸文庫、1997.03.01 262p ¥525 C0195 (2023.07.21読了)(2008.12.20購入)(1998.04.10/3刷) 【目次】 1 二十世紀とは 2 国家はどこへ行く 3 イスラムの姿 4 アニメーションの世界 5 宗教の幹 6 日本人のありよう 7 食べ物の文化 8 地球人への処方箋 「時代の風音」注 あとがき  宮崎駿 (「BOOK」データベースより)amazon 20世紀とはどんな時代だったのか―。21世紀を「地球人」としていかに生きるべきか―。歴史の潮流の中から「国家」「宗教」、そして「日本人」がどう育ち、どこへ行こうとしているのかを読み解く。それぞれに世界的視野を持ちつつ日本を見つめ続けた三人が語る「未来への教科書」。

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2022/12/26

「戦略読書日記」で取り上げられていて、気になって読んでみたけど、難しかったーーー!!! 30年前に刊行されたということで、当時の世界情勢なども朧げだし、注釈を追いながら読んでなんとかついていった、という感じ。 なかなか咀嚼できず読み終わるのに1ヶ月ほどかかってしまった。 宮崎駿...

「戦略読書日記」で取り上げられていて、気になって読んでみたけど、難しかったーーー!!! 30年前に刊行されたということで、当時の世界情勢なども朧げだし、注釈を追いながら読んでなんとかついていった、という感じ。 なかなか咀嚼できず読み終わるのに1ヶ月ほどかかってしまった。 宮崎駿はほぼ聞き役で、堀田善衛と司馬遼太郎が博識すぎて圧倒されまくり。格好良いなあ。 このお三方のようにというのは烏滸がましいけど、いつまでも好奇心を持ち続けたいし、知識と教養が溢れる人間になりたい。 もっと理解を深めたいし、だからこそ定期的に読み返したい。

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2023/11/12

基本的に、仕事で出版社から送られてくる資料として読む本はブクロがない。ほぼビジネス書だからだ(ちなみに自分ではビジネス書、自己啓発書の類は読まぬので、1冊も蔵書がない)。 でも今回は仕事ではあるものの自分の趣味の範囲の本なのでブクロいじゃう。 今から約30年も前の鼎談集だが、語ら...

基本的に、仕事で出版社から送られてくる資料として読む本はブクロがない。ほぼビジネス書だからだ(ちなみに自分ではビジネス書、自己啓発書の類は読まぬので、1冊も蔵書がない)。 でも今回は仕事ではあるものの自分の趣味の範囲の本なのでブクロいじゃう。 今から約30年も前の鼎談集だが、語られている内容は1周回って現在でも十分意味深いもので、いくつかの指摘はすで現実のものとなっており、知の巨人たちの慧眼に驚倒する。 やっぱり、というか昔の人は知識も教養もエベレストのごとく高く、マリアナ海溝のように深いのぅ……。堀田氏と司馬氏を「昔の人」というのは失礼かも知らんが。 2人の知識と教養は、補い合いつつ刺激し合いつつなので非常に高揚する。この2人をアテンドした宮崎氏もすごいと思う。 いちばん驚いたのは、この本の堀田氏の校正が一箇所のみだったということ。つまり本書に収録されている文字をそのまんま発言したということ。脱帽。 ちなみに私が読んだUPU刊行の単行本の装画は宮崎氏による迫力ある船。ただし、タイトルで3分の1ほどが隠れており、装丁家のセンスを疑う。

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2022/04/19

2022.4.9市立図書館 単行本は1992年、ユー・ピー・ユー。 初出は「エスクァイア」の鼎談、宮崎にとっての夢の顔合わせを取り持った形。基本的には司馬と堀田が持論を語りまくるのを宮崎駿が聞いているという感じ。 30年前、ちょうどソ連が解体された頃の話だが、冒頭のソ連と中国につ...

2022.4.9市立図書館 単行本は1992年、ユー・ピー・ユー。 初出は「エスクァイア」の鼎談、宮崎にとっての夢の顔合わせを取り持った形。基本的には司馬と堀田が持論を語りまくるのを宮崎駿が聞いているという感じ。 30年前、ちょうどソ連が解体された頃の話だが、冒頭のソ連と中国についての見方をはじめ、日本のこと世界のこと、あれやこれや勉強になることばかりでおもしろい。まさにロシアの資本主義はうまくいかないまま新たな侵略・征服で国をまとめようとしているのだな…と今読んで腑に落ちるし、北方四島のことにも触れているが、この当時はまだいずれ(そうたやすくはないものの)返されるものと疑っていなかったのだとわかる。鼎談の最後は21世紀に向けての最後の十年で戦争と環境破壊をなんとかしなければという話でしめくくられており、このときは京都議定書以前で世界的に環境意識はまだまだだったんだなあと思い出させてくれる。 堀田善衛も司馬遼太郎もけっきょく21世紀を見ずになくなったが、いまの世界をみてなんというか聞いてみたくなる。 そして、敬しつつ自分にはまだ難しそうで手にとるのをためらってきた堀田善衛(橋本治の前のなだいなだのさらに先代の「ちくま」巻頭エッセイ執筆者)、そろそろ読めるようになっただろうか。

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2020/07/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

もちろん宮崎駿関連本として手を伸ばしたのだが、いろいろ思うところあり。 1992年の鼎談を単行本→文庫化。当時堀田74歳、司馬69歳、駿51歳。 そりゃ駿も聞き役に回るわけだ。 もちろん当時から駿は知識詰め込み型だったはずで、だからついていけた。 鼎談以前から日本論や国家論や文明論を咀嚼していたはずで、その中で「となりのトトロ」がものされたわけだ。 この鼎談の延長上に「もののけ姫」と「千と千尋」がある……というのはさすがに言いすぎかもしれないが、駿が文化人として見習っている人たちなんだろう。 んで当時わたし9歳。 高校生のころに堀田善衛には手を伸ばして、全然太刀打ちできなかったなぁ。 司馬は「竜馬がゆく」の講談調の読みやすさに乗せられてスイスイ読んでスッカリ忘れてしまった。 このふたりは巨人のごとく広く深く語り、正直読み切れず。 高校生当時ならわからないまでも必死に食らいついていたな、と、梅原猛・中上健次「君は縄文人か弥生人か」、柄谷行人・蓮實重彦「闘争のエチカ」、浅田彰・島田雅彦「天使が通る」などを律義に読んでいた自分を思い出す。 すっかり読む体力が落ちていることに気づく。

Posted byブクログ