バルカンの民族主義 の商品レビュー
本書は最初に「本書では、このようなバルカン地域に近代以降生じた民族主義の歴史的背景や特質を概観するとともに、それを乗り越えようとする動きにも注目して、「紛争地域」「危機地域」「悲劇の地域」といった、この地域にたいするステレオタイプなとらえ方を再検討してみたい。」と述べている。バル...
本書は最初に「本書では、このようなバルカン地域に近代以降生じた民族主義の歴史的背景や特質を概観するとともに、それを乗り越えようとする動きにも注目して、「紛争地域」「危機地域」「悲劇の地域」といった、この地域にたいするステレオタイプなとらえ方を再検討してみたい。」と述べている。バルカン地域は、複雑な民族構成、複雑な宗教分布、そして今なおこの地域の人にくすぶる対立の感情がいつ火を噴くか分からない。昨年のコソヴォの独立はバルカン問題が現在進行形であることを世界に見せつけた。人は争いが起これば平和を希求する生き物でもあり、また逆に平和に慣れると勇ましい発言や行動にあこがれる生き物でもある。最終章に「バルカン地域協力の可能性」というテーマでバルカン連邦構想の系譜や連繋を探る動きなどを紹介しているが、多くの人がバルカン諸国の連繋と協力の必要性を痛感しているにもかかわらず、その流れは主流ではない。また、古くはトルコ、そしてロシアとオーストリア・ドイツのゲルマン人、20世紀後半以降ではソ連とアメリカという外部からの容喙もこの地の安定を阻害し続けた。そうしたなかで、著者はこの地域に対して中立的立場に立つことのできる日本の役割を訴えて本著を結んでいる。一人の日本人として、著者の訴えに耳を傾けずにはいられない。
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バルカンの民族主義について歴史的な視点から解説。セルビアで早く民族主義が根付いた理由を、セルビア総主教座とセルビアの英雄叙事詩の存在に求めているのが個人的に興味深かった。
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