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汚辱の近現代史 の商品レビュー

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2010/04/05

 東京大学教授・藤岡信勝氏がこれまで近現代史教育を自虐史観であるとして批判し、自由主義史観なるものを提起した著作である。いまさら紹介する必要もない本ではあるけれど、読まずぎらいはよくない。一度は目を通してきちんと批判はしておかなくてはならない本だと思う。世の中には気に食わないもの...

 東京大学教授・藤岡信勝氏がこれまで近現代史教育を自虐史観であるとして批判し、自由主義史観なるものを提起した著作である。いまさら紹介する必要もない本ではあるけれど、読まずぎらいはよくない。一度は目を通してきちんと批判はしておかなくてはならない本だと思う。世の中には気に食わないものは見たくないと言って遠ざける人もけっこういるみたいだ。くだらないから、と無視するのは簡単だけどそれは教師としての責任を放棄したことにもなるのかもしれない。  藤岡氏の目指すところは「元気の出る歴史」であり、「誇りの持てる歴史」教育である。しかし、歴史というのはまずは事実が何なのかが問題なのである。それをどう解釈するかは史観と言うよりその人間の人間観、人生観の問題であろう。たとえば慰安所について文部省の建物の中の民間業者が経営する食堂の例に戦地慰安所と軍の関係をなぞらえて、この食堂は文部省の経営ではない(=慰安所は軍の経営ではない)と論じている。そういうのを我々はふつう文部省の食堂と言うし、軍の施設だと言うのだけれど、それを経営の責任がないことの言い逃れに使おうとすればするほどそこで辛酸をなめた人の神経を逆なでしていることに気づいていない。その無神経さに語る人の人間観が顕れてくる。そのことが藤岡氏が言う「戦略論で近現代史を見る」に際しても「戦略」そのものを誤る原因でもある。くだらないからと無視してはいけない。きちんと読んで、しっかりと呆れるべきであろう。  ★★★★ こういう本はちゃんと読んでおくべきだ。

Posted byブクログ