カメラ の商品レビュー
ざばっと一定の勢いに任せ読んだ印象は、『透明度の高い灰色の膜』 膜は内側なのか外側なのか、それは問題ではなく、私には膜の奥には彩度の高い世界があるような気がする。しかし見えるのは灰色の膜。 膜はしゃぼん玉のように粒子が流れ続け、もしかしたらこれが瞑想による真理の片鱗なのかとさ...
ざばっと一定の勢いに任せ読んだ印象は、『透明度の高い灰色の膜』 膜は内側なのか外側なのか、それは問題ではなく、私には膜の奥には彩度の高い世界があるような気がする。しかし見えるのは灰色の膜。 膜はしゃぼん玉のように粒子が流れ続け、もしかしたらこれが瞑想による真理の片鱗なのかとさえ感じる。
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全体的に灰色な、淡い色合いの作品でした。主人公の「ぼく」は皮肉やでありながらとても素直な人間であることが伝わってきたが、しかし彼を包むのは恋人となったパスカル然り生暖かい質感であった。そういった日常の中で、彼が手にしたカメラで撮ったぼやけた写真は、辺見庸氏が批評したマリオ・ジャコメッリのような写真だったのではないかと、私は想像した。どれも些細に異なる日常は、つまり、何れも彼の中でぼやけている(それとも寝ぼけている?)のだ。しかし、本作最後のシーンにおいて、そんな彼の視界は一気に開ける。それは作品を通じてトゥーサンが彼に与えた賛歌のようであった。
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目が滑るというのとは違うのだけど、頭の中に入ってこなくて、でも読みやすく訳されてて、流れる川を彷彿させるような文章だなあと感じた。 あと「」を使った会話文がなく、比較的擬音語(ことん、とか)が少なくて説明文っぽいなあと。 どうして「カメラ」なのかなあと題名のことを考えながら読み...
目が滑るというのとは違うのだけど、頭の中に入ってこなくて、でも読みやすく訳されてて、流れる川を彷彿させるような文章だなあと感じた。 あと「」を使った会話文がなく、比較的擬音語(ことん、とか)が少なくて説明文っぽいなあと。 どうして「カメラ」なのかなあと題名のことを考えながら読み進めていたのだけど、個人的に、主人公視点でのみ語られていることから、その視点がカメラがピントを合わせている様子に似ているなあと思った。あと音の描写が割と少ない気がする。 映画の脚本みたいだと思って読んでいたのだけど、実際トゥーサン自らが監督して映画化しているんですね、納得してしまった。 雨の日の朝、布団にくるまってごろごろしながら読みたいなあ。
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語ること、それ自体に付着してるものを、全部とっちゃいましょう。 そんなこと言われたってできるものではない。 でも、ここでトゥーサンは、そのイメージを「流す」ことによって、かなりうまいことやってのけたという感じがする。 その「流す」イメージと対極にあるカメラがタイトルに取られている辺りこれは確信犯だろうなあ。流れているはずの事象を固定化させしかもそこに独自の文脈を生成する写真、それは事象の再構築と意味づけを以ってして可能になる「書くこと」つまり「語ること」と重なってくる。だけどその解体を戦略的にやろうとしたとき、すでに「語ること」の文法に捉われているし、そこを出発点にする他ないから、結局はその不可能性にあえぐことになる。ところがトゥーサンはその辺、あえぐところを隠そうともせず、しかしどこまでも軽やかなままで、イメージは奇跡的に流れているように見えるし、流れようとし続けている。そうやって何かに触れようとする、し続ける、その試みが成功しているように見える。それってすごいことだなあって思うのです。
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すごくよかった。乱れることなく続く何気ない描写には、気だるさすらない。流れるような映像的な景色と、そのなかに書かれないところにある何かが、かたちをあたえられる前に美しくあるのってすごいなあ。
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前の2作に比べると思索的な文章がけっこう長々とまとまって出てくるのが印象的。それにしても訳者の野崎歓さんの解説はいつもすてき。このひとの本をこのひとの翻訳で読めることがうれしい。
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