文体練習 の商品レビュー
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おもしろいとかおもしろくないとかはよく分からない。 よくこんなたくさん書いたなというのが正直な感想。 読んでみてよかったとは思うが、もう一度読むことはなさそう。
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20世紀フランスの作家レーモン・クノー(1903-1976)による実験的な作品、旧版1947年、新版1973年。ある単純な出来事を99の文体で書き表したもの。 一時期はシュルレアリスムや実存主義のグループと近かったこともあった。その後もミッシェル・レリスやジョルジュ・バタイユら...
20世紀フランスの作家レーモン・クノー(1903-1976)による実験的な作品、旧版1947年、新版1973年。ある単純な出来事を99の文体で書き表したもの。 一時期はシュルレアリスムや実存主義のグループと近かったこともあった。その後もミッシェル・レリスやジョルジュ・バタイユらとは交友が続いたという。1960年に発足した文学グループ「ウリポ」にて、言語遊戯などを通した文学実験を展開した。 □ 言葉が世界の像であり、世界が言葉の像であるならば、言葉遊びは世界をおもちゃにする遊び。言葉が世界と精神との境界接面であるならば、言葉遊びは精神をおもちゃにする遊び。世界も精神もいっぺんに笑って面白がってしまえる遊び。 もうひとつ、言葉のまえには読者がいる。読者も読書行為も、いっしょにパロディ化されて、そうしてみんな笑ってしまえる。そうした言葉の軽妙さ、つまり自由の軽妙さを味わえる。言葉をあいだにはさんで、世界も精神も、場所だとか属性だとかなくなって、描線もなくなって、中空に消失してしまいそう。ボルヘスみたいな高度の感覚。 読後、具体物のどんな影も残さないが、それでもこの本はなにがしかのものであって、それは言葉や読書がなにがしかのものであることと同じであると思う。そしてそれは、それ自体で、味わうに値するのだと思う。 「語られるべき内容がほとんどなくても、言葉は無限に増殖して一冊の本になることができるのだ」(p138,訳者)。
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同じ出来事をいろんな文体で書いてみた。というのは簡単そうだけど、その数、99。無茶な内容もあるけど、面白い。しかし、翻訳がうまい。ソネットなんか、驚異的。 しかし、ふだん、意識していないけど、内容にあった文体を書けるようになりたいなあ。
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とあるひとつの日常的な風景を99通りの文体で書き表してみました、といった内容の本。 文体、とはいってもアナリズムやリポリズム、自由詩、短歌、子音交換や複式記述(「頭痛が痛い」的な表現)、さらには確率論や幾何学を利用したものなど、「文体」とは言えない手法も混ざってはいる。 ...
とあるひとつの日常的な風景を99通りの文体で書き表してみました、といった内容の本。 文体、とはいってもアナリズムやリポリズム、自由詩、短歌、子音交換や複式記述(「頭痛が痛い」的な表現)、さらには確率論や幾何学を利用したものなど、「文体」とは言えない手法も混ざってはいる。 読んでいてまず感じるのは、「これ、本当に翻訳が大変だったろうなぁ」ということ。 あとがきを読むと「問題はひとつひとつのことばの意味ではなく、全体としての変換のルール」なのであり「翻訳の作業はほとんどゲームの様相を帯びてくる」つまり「ゲームのルールは原文に指定されており、そのルールを使ってどれだけ『日本語』で遊ぶことが出来るか」が大切であり、章によっては「元のルールを日本語に合うように修正したローカル・ルールによるもの」とのこと。 ここだけ抜き出してもわかりにくいかと思うが、実際に本書を読んでみると、実に的を射た表現だな、と思わせてくれる。 中には「これ、翻訳じゃなくて創作だよね」という章もある。 イギリス人がなまりの強いフランス語をしゃべっている、なんて文章を日本語に翻訳する、なんてことはどだい無理な話である。 それを、苦し紛れな手法もあるが、とにかく完訳しただけでも、物凄い労作であろうことには間違いない。 それにしても実に様々な文体(あるいは手法、はたまた変換方法)がある。 例えばスネイクマン・ショーの「こなさんみんばんは」や、テレビドラマ「トリック」で上田教授がよく口にしていた「ばんなそかな」、桑田佳祐が作る歌詞「You gotta(夕方)」や「I Could Never(愛苦ねば)」といった英語による日本語っぽい表現、さらに邪推すれば、業界用語と言われている「ギロッポン」「シースー」、そして「まいうー」すらも、この文体練習を元にしているのでは、なんて考えが浮かんでしまう。 要するに、上記のような「文体練習」も出てくるのであり、章によっては暗号の創り方にも使用できそう。 機械的な置き換えと思えるものもあるが、解説を読む限り「最終的にはクノーの言語感覚と遊びの精神によって制御されているのであって、けっして機械的な変換がなされているわけではない」とのこと。 面白い章もあれば、正直どこが面白いのかさっぱりわからない章もあるが、すべての章を読み終えて、結果として再認識できたのは、「日本語」という言葉の面白さ、柔軟性、特徴、欠点、そしてなんといっても奥深さであった。 蛇足ながら、僕はこの本をブックオフで税込で「1,750円」で購入した。 古本で集めた書籍の中では二番目に高い金額だった。 実際に定価でこの本を買おうとすると消費税8%で計算して「3,669円」になる(小数点以下切り捨て)。 変則的なサイズであり、ところどころ凝ったつくりにもなっているし、間違いなく労作なのだが、195頁の本としては、いささか高額なように思えるのだが……。
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1つのちょっとした話が、99通りの文体で繰り返し語られる。同じ物語でもこんなに多様な表現の仕方があるのかと感動するような章もあれば、アナグラムなど「文体」とは言えない(しかも出来上がった文は意味不明)ものもある。暗号のような文も、試みとしては面白いと思う。 訳者のあとがきもかなり...
1つのちょっとした話が、99通りの文体で繰り返し語られる。同じ物語でもこんなに多様な表現の仕方があるのかと感動するような章もあれば、アナグラムなど「文体」とは言えない(しかも出来上がった文は意味不明)ものもある。暗号のような文も、試みとしては面白いと思う。 訳者のあとがきもかなりしっかりした分量があり、翻訳の裏話が読めるのも嬉しい。
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2016.4.23市立図書館 日本で言えば井上ひさしあたりがやっていたような試み。一つの内容をさまざまな言葉遊びやパスティーシュなどで変奏してみせる文体見本帳。フランス語の原著を日本語に翻訳する段階で翻訳不能なものももちろんあるが、そこは訳者の工夫で日本語での似たような遊びに変換...
2016.4.23市立図書館 日本で言えば井上ひさしあたりがやっていたような試み。一つの内容をさまざまな言葉遊びやパスティーシュなどで変奏してみせる文体見本帳。フランス語の原著を日本語に翻訳する段階で翻訳不能なものももちろんあるが、そこは訳者の工夫で日本語での似たような遊びに変換したりしていて(というあたりはルイス・キャロルやジェイムス・ジョイスの翻訳の苦労に通じる)、おもしろく読ませる。 こういうのをうまく訳して読者を楽しませることができたらまさに翻訳者冥利なのだろうなあ。
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レイモンクノー「文体練習」http://www.suiseisha.net/blog/?p=2346 読んだ。バス車中でいざこざを起こした男をその後しばらくしてから街角で見かけた、という話を103(99+おまけ4つ)の文体で表現した本。翻訳とは何ぞやということを考えさせられる。...
レイモンクノー「文体練習」http://www.suiseisha.net/blog/?p=2346 読んだ。バス車中でいざこざを起こした男をその後しばらくしてから街角で見かけた、という話を103(99+おまけ4つ)の文体で表現した本。翻訳とは何ぞやということを考えさせられる。語学に堪能だったらなー(つづく 103つの書き分けを読むというよりは、ある同じ出来事を体験した103人から別々に話を聞かされているような感じで、微妙に異なる話から事実は何なのかを自分で組み立てるような面白さがある。軽くてふざけた薮の中みたいな。ただね訳者は翻訳の苦労を語らないで欲しい、興ざめするよ(おわり
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何の変哲もない日常の一コマを、99種類の文章で描き出すっていう実験的な(?)一冊。原著はフランス語。 なにこれ、面白ー。変なことを考える人がいたもんだ、と思って読みたい本リストに入れたまま、ずっと忘れていた。。。 やっぱり面白かった。一朝一夕で99種類かけるようにならないよね。...
何の変哲もない日常の一コマを、99種類の文章で描き出すっていう実験的な(?)一冊。原著はフランス語。 なにこれ、面白ー。変なことを考える人がいたもんだ、と思って読みたい本リストに入れたまま、ずっと忘れていた。。。 やっぱり面白かった。一朝一夕で99種類かけるようにならないよね。すごい。 もう、翻訳する人の苦労が推して知るべしだよ…超楽しそうだけど、想像しただけで涙出ちゃう。 原文のフランス語のものは、フランス語学習にも用いられるくらい有名な作品なんだって。 10. 虹の七色: こういうのすてき。どうやら原文も絶妙らしい。 23. あらたまった手紙: 夢野久作の少女地獄を思い出した。 63. 古典的: 枕草子きた…! 82. 聞き違い: 絶妙すぎ。笑 88. 罵倒体: なぜかジョジョを読んでいる気になる。 フランス語さっぱり分からんのが残念だなぁ。英訳されて売ってるのなら、それはそれで読み比べてみたい。 この本が更によかった点は、99編が終わった後に訳者の解説があって、ひとつひとつの要点とかを説明してくれているのです!苦労した点とか、ぶっちゃけもう訳せないんで枕草子にしました、とかいう話があってすごい興味深かった。 この朝比奈さん訳版の他に、松島さん訳版というのもあるらしい。是非読み比べてみたい。 こういうの好きな人には絶対おすすめな1冊! -- 前人未到のことば遊び。他愛もないひとつの出来事が、99通りもの変奏によって変幻自在に書き分けられてゆく。『地下鉄のザジ』の作者にして20世紀フランス文学の急進的な革命を率いたレーモン・クノーによる究極の言語遊戯がついに完全翻訳。
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日常の他愛もない出来事を99通りの文章で 表現する究極の真剣な言葉遊び 著者と並びに翻訳者さんにも拍手! いつか原文が読めたらいいな(あくまで希望) 「訳者あとがき」から レーモン・クノーは1949年に彼の詩「きみが想像するなら」 "Si Tu T''imagines"をジュリエット・グレコが歌い大ヒットとなったのち 『地下鉄のザジ』が映画化され有名になる "Si Tu T''imagines"は「あなたがそのつもりでも」の 訳が一般的なよう 詩人ピエール・ド・ロンサールの「カッサンドルへのオード」から 着想を得て書いた詩、ということでロンサールも読みたい。。 追記 amazonの[Audible Audio Edition]のサンプルの音楽が面白かった http://www.amazon.com/Exercices-de-style/dp/B00TCL6GKG/ref=tmm_aud_title_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=
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20150424読了。 同じ内容、同じ出来事を99の文体で書き表している。 同じ内容なのに、表現の仕方でこうも印象が変わるのか。 あー、こういう書き方あるある、というのを読みながらニヤリとしてしまった。 お気に入りは「91表現不能」。 どれもこれも翻訳が大変だったろうなと思う。
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