トリックスター(下) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
カナダの静かなスキー・リゾート地シルヴァー。スキー場の整備員サムはカナディアン・ネイティブでありながら、自らの出自を呪い、白人の妻ケイティや2人の子供と“白人として”暮らしていた。 サムの住むシルヴァーでは残虐な猟奇殺人が続発する。死体はどれも心臓が肛門に、陰茎が口に押し込まれていた。自分が事件の度に現場付近で気を失って倒れていることに気付き、脅えるサム。警察もまた彼に疑いの目を向け始めていた。サムは封印した忌まわしい記憶と、真犯人である邪悪な霊=トリックスターと対決し得る唯一の存在であるという己の使命とに向きあうことになる……。 カンディアン・ネイティブ、即ち北米インディアンの伝承がこの物語の中心。森羅万象にスピリット(精霊)を見出す、いわゆるアニミズム的な世界観はある意味、文明社会が置き忘れたものを今なお残していると言えるのかも知れない。 結末から言えば(ネタバレ)サムは一度は捨てたインディアンとしてのアイデンティテイを取り戻し、トリックスターと対決するわけだが、何より彼を支えていたものは家族への、そして家族からの愛だった。「家族愛」の尊さ、それは白人だろうがインディアンであろうが関係ないこと。これがこの作品のテーマではなかったろうかと感じた。 あとがきを読んで知ったのだが、著者は女性だとのこと……なるほどねぇ。
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