遙かよりくる飛行船 の商品レビュー

井辻朱美(著者)

2015/01/18

からんと晴れた深い青い空、彼方に飛行機や飛行船が白く光るのを見る度にこの本のことを思い出して読み返したいと思っていたのだ。

ふさわしい、ぽかんと晴れ渡る日曜の朝、読み終えて幸せな心持ち。

輝く高層ビルの彼方、青空に白く光る飛行機を眺め、恐竜の遺跡に会いに行った日曜日となった。

そうだ、こういう不思議な本だったのだ。大好きだと思った記憶だけ残っていたんだが読み直したらやっぱりとっても好きだった。

きちんと科学的論理や理屈の通らない非常に官能的感覚的文学的なSFテイスト。だけど何か世界の構造を誰にも真似のできないまっすぐなやりかたで見ようとする。めちゃくちゃに濃いオリジナリティだ。

神話や民俗、異界、歴史。愛や執着、肉体のかたち。人間を地へと繋ぐ思い暗い形而下の要素を否定することなくそのままに、ただ意味を塗り替えてゆくような、それらすべてのすべてをまったく新しい未知の科学への祈りや夢の匂いをまとわせて未来へと飛躍させる、明るい青い都会の空に彩られた楽しいファンタジイ。

2011/05/31

幻想第四次の恋愛小説。児童書に分類されているが、初めて親元や故郷を離れて都会で働く若い女性に読んでほしい。リーデンブロック最高！

2009/10/04

近未来と古い呪術、恋と呪い、救いの目印は飛行船。
恋愛小説だと個人的に思っています。
ファンタジーが好きな方におすすめ。

2009/10/04

人形、恐竜、ゲニウス・ロキ･･･。『ファンタジーの仕掛け』などの評論でもたびたび取り上げられている井辻さんらしいモチーフがちりばめられています。
「月の裏側の夢の地球」から恋人を呼び寄せてしまうアスナは、ワーグナーのオペラ『ローエングリーン』(井辻さんのお好きなオペラだそうですが) のエルザのようだと思いました。ハッピーエンドで終わるローエングリーン。どちらも私のイメージでは、色でたとえるなら銀色と青です。
井辻さんは NY を訪れてこの物語のインスピレーションを得たそうですが、1996年の刊行なのに、9.11 を連想させるシーンがあるのにはびっくり。