嘆きよ、僕をつらぬけ の商品レビュー
原民喜について『美しき死の岸に』の名でまとめられた一連の短編群と、『夏の花』を読み解くアプローチで論じている。梯久美子さんの『原民喜』では取り上げられてなかったと思われる、昭和23年に親身に世話をしてくれていた女性の編集者に求婚したが受け入れられなかったというエピソードがまた違う...
原民喜について『美しき死の岸に』の名でまとめられた一連の短編群と、『夏の花』を読み解くアプローチで論じている。梯久美子さんの『原民喜』では取り上げられてなかったと思われる、昭和23年に親身に世話をしてくれていた女性の編集者に求婚したが受け入れられなかったというエピソードがまた違う視点を与えてくれた。
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妻の死に、また原爆による無数の死に向き合いながら自分自身の死へ向けた想念を研ぎ澄ませていく歩みとして原民喜の文学を、あくまで文学として、「原爆文学」というカテゴライズを超越したものとして読み解こうとする試み。それゆえ読解の中心に据えられるのは、『美しき死の岸に』と『夏の花』である...
妻の死に、また原爆による無数の死に向き合いながら自分自身の死へ向けた想念を研ぎ澄ませていく歩みとして原民喜の文学を、あくまで文学として、「原爆文学」というカテゴライズを超越したものとして読み解こうとする試み。それゆえ読解の中心に据えられるのは、『美しき死の岸に』と『夏の花』である。作品が限定されすぎている印象もなくはない。文学として読むという姿勢そのものは共感できるものの、その「文学」が著者の傾倒するある種の「日本文学」に限定されている感がある。かつ著者の思い入れによって原民喜が勝手に「浮かばれて」しまっていることは、彼の文学の内的な経験を深めていく可能性を狭めてしまう危険性も孕んでいよう。リルケの『マルテの手記』が原民喜の文学に深い影響を与えているという指摘は、あらためて示唆的。
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